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ー過去ー141

最後に裕実は和也に向かい笑顔を向けると、車はそのままホテルの駐車場へと入って行くのだ。  一方、望は明日の朝まで雄介が帰宅して来ない為、残り三十分位で二十七歳という歳が終わりを迎える時間にまでなってきていた。  望は一人ワインを飲み、一人の時間を過ごしている。  この一年で望には色々な事があった。 雄介に出会い人生観が変わったようにも思えるような歳にもなった。  望と雄介があの時に出会わなかったら? 一体、どうなっていたんだろうか。 毎日のように何も変わらない毎日を過ごしていたのだろうか? それとも和也と付き合ってたのであろうか? そこは分からないのだが、望が雄介と出会って何かが変わったのは間違いない。  実際、人生っていうのは何があるのか分からない。 よく神様がその人の人生を決めているという事を聞くのだが、きっと人生というのは自分自身で決めていくものなのであろう。  例えば誰かに相談したとしても最後は必ず自分の意志で結果を決める事になるのだから。  望も最後は雄介と付き合う事を決めたのは、まさに自分の意志でもある。 望は雄介に告白をされ、それを友人である和也には相談したのだが、最後の最後には自分で雄介と付き合うと決めたのだから。  望がフッと時計の方へと視線を向けると、もう二十七歳という時間は五分を切っていた。 「もう、二十七歳も終わりかぁ」  そう望はしみじみと呟く。  今まで誕生日なんか意識した事もなかった望。 だが今年からは何かが違う。  友人にはお祝いしてもらい、これからは恋人にも祝ってもらえるのだから、顔から笑みが溢れない訳がないだろう。  いつの間にか柱時計は短針も長針も天辺を指し、部屋内には十二時を知らせる鐘が鳴り響く。 そうだシンデレラだったら、魔法がとける時間でもあるのだが、望の誕生日というのは寧ろこれからだ。 これから二十七歳という年を迎えて、またどんな年になるのであろうか。 とりあえず雄介がいる限りいい年になるに決まっている。  そして望は一人部屋の中でワイングラスを天井へと掲げると、 「カンパーイ!」  という声を部屋内へと響かせる。  確かに一人で呑む酒というのは少し寂しい気もするのだが、今は仕方がない。 恋人である雄介は仕事でいないのだから。 だが、その恋人の雄介だって今日の午前中には帰って来る予定だ。 今日という日は本当に望の誕生日なのだから、今日中に雄介に祝ってもらえれば十分だろう。 「さて、ワインの方も呑み終わったし、やる事ねぇから寝るか」  と望は椅子から立ち上がり、自分の部屋へと向かうとベッドへと横になる。  望はお酒のせいもあってか、ベッドへと横になった直後には眠りへと落ちていた。  そう今の望は雄介がいなくとも、ベッドでゆっくりと眠れるようになっていた。 ベッドは一人暮らしの時とは違い、僅かではあるのだが、雄介の匂いというのがある。 そして僅かな温もりだってあるのだから、望の方はゆっくりと眠る事が出来るようになったのかもしれない。

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