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ー天使ー85
和也は受話器にしっかりと耳を当て、
「って、裕実……望はどんな状態なんだ?」
その和也の言葉に傍にいる雄介が反応しない訳がないであろう。
「和也……望になんかあったんか?」
雄介は顔色を変え声を震わせてまで和也に聞いてくる。
そんな雄介の様子に和也は気付き裕実の言葉をきちんと聞く為に、一旦、雄介には静止を求めるかのように人差し指を口元に当て静止を求めたようだ。
それから和也は裕実の言葉に一語一句逃さずに真剣に聞き始める。
「ああ、分かった……ありがとうな」
そこで一旦、和也は電話を切ると、雄介の方に顔を向け、
「とりあえずは望も大丈夫みたいだぜ……確かに、怪我はしたみたいだけど、大したことねえってさ」
和也は雄介にそう告げると、椅子へと腰を下ろす。
とりあえず今は救助を待つか観覧車がまた動き出すかないであろう。
和也は窓の外を見つめる。
そして望達が乗っているゴンドラの方へと視線を向けるのだが、やはり状況は先程とは変わっていない。
しかし望は本当に大丈夫なんであろうか。
実は和也が雄介に伝えたことは全くの嘘である。
そう裕実が言っていたのは望にしては珍しく観覧車に乗ってはしゃいでらしいのだが、立ちながら周りの景色を楽しんでいたらしい。 だが、その途中ゴンドラが急停止してしまった為バランスを崩してしまった望は運が悪いことに頭を椅子の角でぶつけてしまい今は意識も無いということだ。
和也達が乗るゴンドラから望達が乗っているゴンドラは確実に見えない。 その状況がいいのか悪いのかは分からないのだが。
そのことを雄介に言えば雄介は自分自身の身を考えず何とかして今乗っているゴンドラから降りて望達が乗っているゴンドラに向かうのは間違い。
だから和也は雄介までそんな危険な目に合わせてまで望達がいるゴンドラに行かせる訳にはいかないからだ。
だから和也は雄介に行かないように瞬時で頭の中で判断し、雄介には望は大したことがないというのを伝えたのである。
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