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ー信頼ー92

「和也、どないしてくれんねん。 望の奴、そっぽ向いてしもうたやないかぁ」  雄介は望には聞こえないようにと和也の耳を引き寄せ、 「不機嫌全開の望をこっちに振り向かせるのは大変なんやで……」 「まぁ、そういう事だ」  雄介からそう言われているのにも関わらず、和也は立ち上がり、 「んー、とりあえず、寝るかな? 裕実、寝ようぜ」  そう言うと、和也は裕実の手を取って部屋へと行ってしまうのだ。  雄介は望に聞こえないようなため息を漏らすと、 「な、なぁ、望ー、さっき、和也が言ってた事許してやってなぁ」 「……分かってるよ。 確かにはじめはムカつくって思ったけどさ。 和也がいつもの和也に戻って、寧ろホッとしたって感じだしな。 もう、俺等っていうのは子供じゃねぇんだ。 そんな事で一々腹たっていたらガキと変わらないだろ? 確かに俺の名前っていうのは女の子でも使われる名前だけどさ……親から最初に受け取ったプレゼントなんだぜ。 一生無くならない貰い物なんだからさ、それが例え、自分が嫌いな名前だとしても、一生に一度しか貰えないプレゼントなんだから大事にしないとな。 だから、今は『望』って名前は嫌いじゃねぇよ」 「確かに、そうやんなぁ。 子供の頃っていうのはもっとカッコええ名前が良かったとかって思うねんけど……今はそれでええって思っとるしな。 それに、『雄』って意味は『際立って優れる』って意味やって辞書に書いてあったし、悪い意味じゃないしなぁ」  その雄介の言葉に望はクスリとすると、 「今のお前にはピッタシの名前じゃねぇかぁ。 ぅん……まぁ、親が一生懸命考えて付けてくれた名前なんだしな……色んな意味もある訳だしな」 「『望』やっていい意味やんかぁ、『希望』とかでも使われてる訳なんやしな」 「だから、大人になってからは自分の名前が嫌になった事はねぇよ。 まぁ、小さい頃っていうのは多少バカにされてたけどな」 「子供って、言葉に関しては容赦ないしなぁ。 まぁ、言葉に関してあんまよく理解してないっていうのもあると思うねんけど……こう心に思った事を直ぐに口に出してしまうもんやからな。 ま、それで、たまに、キツい事言われてもうて傷付いてしまう場合もあんねんけど」

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