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ー信頼ー123

 その望の言葉に裕実と和也は視線を合わせ、 「昨日、お前が言ってた事と違うじゃねぇか……。 確かにあの瞬間、俺もお前の言葉に納得したんだけどさ」 「確かに、僕はああ言いましたけど、まさか、無意識だったって事までは分かりませんでしたよ」  二人が今何を言っているのか、望には分かってない事だ。 そんな二人の会話を耳にしながら望は海の方を見つめる。  昨日とは違い、海は大分穏やかになったように思える。 そうゆっくりとではあるのだが、波が静かに砂浜へと上がりそして引いて行っているのだから。  もう昨日のお昼に船が転覆してしまってから二十四時間。 そして雄介が海に飛び込んで行ってしまってから約二十四時間が経とうとしている。  昨日しっかりと雄介の事を止めておけば良かったと、今更後悔しても遅いだろう。  雄介の事を引き止めたかった。 というのもあったのだが、やはり昔レスキューで働いていた雄介に要救助者を救って欲しいという気持ちがなかった訳ではない。 だからそう強くは引き止めなかったというのもある。 雄介が居れば、どんな人でも助けてくれるんではないかという希望があったからだ。  望や雄介は今まで事件や事故に巻き込まれてながらも、どうにか助かって来た事がある。 そういうのって運が強いとも言うのであろうが、もしかしたら恋人が居たからこそ、そのパワーで助かりたい! っていう気持ちがそうしていたのかもしれない。 それに職業は違えどお互い人を助ける仕事で、それぞれの立場で共に助ける事が出来ていた。  だから昨日、望はそんな思いから雄介に要救助者を任せたのだから。  だが要救助者は多分、今のところ全員助かっている。 けれどもその助けに行った本人が未だ帰って来る気配がないだけだ。  今まで苦難を乗り越えて来たつもりだったのだが、今回は流石にその苦難を越える事が出来なかったというのであろうか。 いやそんな事はない。 恋人を想う気持ちがあれば、きっと帰って来る。 いや絶対に雄介は望の元に帰って来ると信じよう。 「……望さん、大丈夫ですか?」  裕実からそう声を掛けられ、望はビックリしたような表情で裕実の事を見つめるのだ。

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