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第6話 予想外の展開 1
振り返った先にいたのは大柄な赤毛の男。肩をいやらしく撫でるように置かれた手は、触れられた瞬間ものすごく嫌な感じがした。肩に置かれたその手を見る前に、条件反射で俺は眉間に深いしわを刻んでしまう。
「あっれぇ、高校生みたいな可愛い子がいるかと思ったら、大悟ちゃんじゃねぇの」
少し間延びした話し方。わざとらしく揶揄する言葉。そして俺をのぞき込むその顔に思いきり舌打ちした。
「新庄 、いたのかよ」
「大悟ちゃん、久しぶりじゃねぇ? なに? 見ない間に彼氏作ったの?」
あからさまに不快をあらわにする俺の態度をさらに助長するように、ニヤニヤと下卑た笑いをする男――この店の常連の一人である新庄。どうやら先ほどまで店の奥のほうで騒いでいたやつらと一緒にいたようだ。
眉間のしわが表すとおりに、俺はこの男が大嫌いだった。わかっていたら座る前に帰っていたところだ。馴れ馴れしく肩に腕を回して触れてくる新庄を睨み返したら、ますます近づいてきた。
「え? なになに、大悟の彼氏?」
「なんだよ大ちゃん、俺らのこと散々無視してたくせにネコちゃんになったのかよ。もしかしてイケメンに限るってやつ?」
「はあ? ざっけんなよ」
新庄の後ろからさらに頭の悪そうな連中が近寄ってくる。俺や雪近を囲むように顔を覗かせるやつらに握った拳が震えた。けれどそれを面白がるように三人はケタケタと笑う。人の顔を見るたびに絡んでくるこいつらは普段は無視を決め込むところだが、俺はマウントを取るようにネコ呼ばわりされるのがとてつもなく嫌いだ。
見た目だけで俺に近寄ってくるやつは多い。確かに俺は小さいしどちらかと言えば細く見える。襲えばなんとかなると思うやつもいるのかもしれない。だが一言目にやらせてくれと言うようなやつは、きっちり拳で沈めてきた。
ただ、新庄は唯一殴りそびれている。身体がでかくて、なにかスポーツをしていたらしく反射神経がいい。できれば顔面に一発くれてやりたいのだが、なかなか隙を見せない。
「大悟ちゃん、初体験は済んだのかぁ?」
「ぎゃはは、ケツでするとハマるって言うしなぁ!」
「なぁなぁ、俺たちにもやらせてよ」
「てめぇら、いい加減に」
震わせた手を握りしめて俺は立ち上がろうと腰を浮かせたが、それより先に新庄が後ろに吹っ飛んだ。
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