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第7話 予想外の展開 2
後ろのテーブルにあるものが床に落ちる音とともに、瞬く間もなく二人目三人目と後ろへ転がり、一瞬店の中がしんと静まり返る。
俺は隣で立ち上がった雪近をまじまじと見つめてしまった。
「あんたたち、これ以上恥かきたくなかったら外に出なよ」
「や、やんのか、てめぇ!」
「うるさいな。ほら、早く立てよ。見た目に違わずグズだな」
普段の温和な声音からは想像できない冷ややかな声。息巻いて声を上げたやつらに細めた目は、底冷えしそうなくらいに色がなかった。長く傍で見てきたけど、雪近のこんな顔は初めて見る。
感情の起伏すらわからない無表情な横顔。正直言えば、ちょっと怖いとさえ感じる。いつもにこにことしている男が表情を変えると、こんなにも凄みが増すんだなと息を飲んでしまう。
「ゆ、雪、これ以上は駄目だ」
一触即発な雰囲気に、俺は慌てて隣に立つ雪近の腕を掴んだ。店の外ならともかく、店内で騒ぎを広げるわけにはいかない。抑えるようにぎゅっと握り、前を向く横顔を見つめる。すると拳を握りしめていた手から力が抜けたのを感じた。
「……このまま黙って出て行くか、頭擦りつけて大悟さんに謝るか、選ばせてやるよ」
雪近に見下ろされた新庄たちは、店中の視線が集まりもう強気に出ることができなくなっていた。三人で苦々しい顔を見合わせると、雪近の顔を睨みながらすごすごと店を出て行く。残っていたほかの仲間もそこに残っていられなくなったのか、テーブルの上に札を放り投げると三人のあとをついて出て行った。
「びっくりした」
「ごめんなさい」
静まり返った店内に俺の声がやけに響いた。その声に先ほどまでとは違う、頼りなげな雪近の視線がこちらを向く。まっすぐに俺を見る雪近の目は少し焦りもにじんでいるが、いつもの穏やかな眼差しだ。それにほっとしながら後ろを振り向けば、辰巳が掃除用具を持ってカウンターから出て来た。
「お前ら怪我するから、ガラスに触るなよ」
「悪い、辰巳。あいつらがあそこまで絡んでくるとは思わなくて」
「ああ、まあ、いいさ。付き合い長いからって放っておいた俺も悪い。お前に気分悪い思いさせたな」
「いや、俺はいいけどさ。グラス代とか」
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