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第9話 予想外の展開 4

「大丈夫だよ。多分そこまで腫れないと思う」 「思ったよりお前が頑丈でよかった」 「大悟さん、あんまり俺のこと美化し過ぎないでね。俺は思っているよりずっと図太い人間だよ」 「そっか、そうだな。ちょっと気にし過ぎた。悪い、お前ももう大人だもんな。いつまでも出会った頃のお前を見ていても仕方ないよな」  困ったように小さく笑う雪近の顔を見て、俺は取り繕うように言葉を連ねた。出会ったばかりの頃は雪近が可愛くて仕方がなかったから、守ってあげたいと感じていたけど。もう俺が手を貸さなくても、雪近は一人で立っていられる年齢になった。  そう思うと出会ってからの五年は早かったが、思う以上に時間の重みがあるんだなと感じた。子供の時間と大人の時間。それは随分違うんだと思い知った気がする。五年で驚くほど成長した雪近。でも俺は五年前とさして変わっていないと思う。なんだか少し自分が頼りなく思えた。  いまの雪近には俺はどんな風に映っているんだろう。 「けど、大悟さんが心配してくれるの嬉しい。俺のこと考えて頭いっぱいにしてると思うとかなり気分がいい」 「それを言うなら俺もだ。まっすぐに俺に向かってくるお前を見ているだけで優越感に浸れる。ずっとお前が欲しいって思ってたんだ。いまお前が傍にいることがたまに夢じゃないかって感じることもある。お前に返事をもらえるまで、結構怖かった」  付き合い始めて二ヶ月が経ったけど、俺が雪近に告白をしたのは去年の暮れだ。一緒に初詣にでも行こうかなんて話していた時、この先も一緒にいられるのかどうかが不安になった。いまはまだ傍にいてくれるけど、人と関わりが増えたら俺なんか忘れてしまうんじゃないかって。  だからこのまま曖昧な関係で傍にいるより、答えを出してしまいたいと思った。振られるなら想いが募ってしまう先の未来より、いまのほうがマシだって言い訳を繰り返して、必死の思いで付き合って欲しいのだと告げた。  その時の雪近は驚いた顔をしていたが、思ったよりも冷静で。言葉を飲み込むと、しばらく答えを待って欲しいと言った。断られるのならいまがいいと言い募ったが、必ず返事をするからもう少しだけ時間が欲しいと頭を下げられた。

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