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第10話 予想外の展開 5
返事が来るまでに六ヶ月近くも待った。もうこれはこのままうやむやになるんじゃないかとさえ思ったくらいだ。正直待つのが辛くて泣きたくなった時もある。
「待ってるあいだにいい男いたのにな」
「ちょ、辰巳! 余計なこと言うな」
「お前は貧乏くじばかりだ」
カウンターにビールグラスを置いた辰巳が、頬杖をつきながら大げさにため息をついた。少し呆れたような声音に俺は思わず口を引き結んでしまう。
「デートしていい感じだったのに断っちまうんだから、もったいない」
「し、仕方ないだろ。それでも、雪がいいって思ったんだよ」
確かに辰巳が紹介してくれた相手はすごくいい人だった。この先も安心して傍にいられそうな、優しくて真面目で温かい誠実なタイプ。一緒にいたら寂しくて泣くこともないんだろうなって思える人。
だけど、どうしても俺は雪近がよかった。答えをもらわないまま諦めるなんてできなかったんだ。
「大悟には幸せになって欲しかったんだけどな」
「俺はいまが幸せだ。雪と一緒にいられるのが嬉しい」
「ふぅん、だけどお前がものすごく心配だよ」
「え?」
曖昧な相づちとぽつりと呟かれた言葉。その意味がよくわからなくて首を傾げたら、辰巳は視線を雪近へ移した。
「あのさ、雪近くんは大悟のどこが好きなの?」
「おい、辰巳! いきなりなに聞いてんだ」
ふいの問いかけに心臓が飛び上がった気がした。けれど俺が慌てて声を上げても辰巳の視線は雪近から離れず、まっすぐに前を見据えていた。それはどこか品定めするような目だ。なぜ辰巳がそんな顔をするのかがわからず、変に胸がざわめいた。
「俺は大悟さんのまっすぐで嘘がない男らしいところが好きです」
「へぇ、そうなんだ。じゃあ、君は嘘をつく?」
「いいえ、俺は嘘が嫌いです」
「そっか、それじゃあ聞くけど。君って結構男関係が派手なんだって? 彼氏付きでも手を出してかなり揉めたってほんと?」
「は? 辰巳、なに言ってんの」
突飛な質問に思わず声が上擦る。けれど二人は視線を合わせたままで俺の声には振り向かない。なんだか空気が凍り付いたような気になる。雪近の男関係ってなに? そう聞き返したいのに声が出なかった。でもしばらく隣にある横顔を見つめていたら、雪近はため息のような大きな息を吐き出した。
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