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第19話 初めてみたいな気持ち 4
時折甘い声が漏れ聞こえて、耳に心地いい。片手をなだらかな身体に這わせると、肩が小さく震えた。
「大悟さん」
「ん?」
「待って」
「あ、悪い。ちょっと調子に乗った」
シャツの隙間に手を入れたところで制止がかかる。けれど慌てて手を引いたら、口の端がゆるりと持ち上げられた。目を細めてこちらを見る雪近に思わず生唾を飲み込めば、身体を持ち上げて口先に口づけてくる。
「いいんだけど、するならシャワー借りてもいい?」
「え? あ、うん。もちろん」
「じゃあ、準備するから待ってて」
「ああ、っていうか。俺、確認しないで勝手に押し倒したけど」
身体を起こして向き合うと、じっと目の前の顔を見つめてしまう。その視線に雪近は小さく首を傾げて俺をまっすぐに見る。
「俺はどっちでも平気。大悟さんの好きなほうでいいよ」
「え? それって、どっちも経験あるってことか?」
「あー、うん。まあ」
問いかけに苦笑いを返されて、少し言葉に詰まってしまう。初めてがよかったとかそういう鬱陶しいことはこの際言わないが、でもちょっといままでの相手が気になった。雪近のルックスだからあまりネコのイメージがなかったし、彼を抱いた相手がいると思えば嫉妬したくなる。しかしそれを言い出したらきりがない。
「ごめんね」
「馬鹿! 謝るなよ。いいよ、もう過去は過去。俺も気にしないようにするから、気にすんな」
「うん、でも好きな人とするのは初めてだから、優しくしてね」
「お前なぁ、そういう可愛いこと言われると、にやける」
いたずらっ子のような目で見つめてくるその顔が死ぬほど可愛くて、いくら引き結ぼうとしても口が緩んで仕方ない。それをからかうように指先で唇を撫でられて、身体がじんと熱くなる。まっすぐな目に試されているような気になった。やわやわと唇に触れる指先を咥えると、それをしゃぶるように口に含んでしまう。
根元から舌で撫で上げれば、目の前の瞳に熱が宿る。指のあいだにも舌を這わせて、その目を揺らめかせた。
「大悟さん、やらしい」
「当たり前だろう。好きなやつ前にして興奮しないほうがおかしい」
「そういう雄くさいところ、いいね。好きだよ」
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