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第21話 艶やかさと初々しさ 1

 入れ違いで風呂に入りシャワーを浴びた。正直ちょっと興奮し過ぎて水を被ってしまった。先に出ていた雪近は俺と同じく腰にバスタオルを巻いただけで、無防備に素肌をさらしている。いままで一度も裸なんて見たことがなかったから、それだけでもう変に気持ちが高ぶってしまって、落ち着けるのが大変だ。  こんな思春期の中高生みたいな反応はかなり恥ずかしい。なるべく彼の前では大人な対応したいと思うのはなけなし男の意地。けれどそんな吹いたら飛びそうな意地は、ベッドで寝そべる雪近の背中を見ているとポッキリと折れる。  健康的な肌色。痩せた印象もなく、適度についたしなやかな筋肉。背中から腰にかけてのラインがやけに色っぽい。タオルの裾から伸びる脚もすらりとしていて、触れてしまいたくなる。  携帯電話をいじっている横顔をじっと眺めながら、しばらくそこに立ち尽くしてしまった。 「……あ、大悟さん。上がったの?」 「ああ、うん」  じっと舐めるように見ている邪な視線に気づいたのか、ふいに顔を上げた雪近が振り返る。やんわりと微笑んだ顔が可愛くて、鼻の下が伸びそうになった。気恥ずかしくて視線をそらしたら、楽しげに小さく笑われる。しかしいつまでも突っ立ているわけにもいかず、ベッドまで行ってその端に腰かけた。そしてこちらを見ている艶やかな黒い瞳に誘われるままに手を伸ばす。  髪は乾かしたのかもうさらさらと音を立てそうなくらい指通りがいい。前髪を指先でかき上げてまっすぐに見つめたら、うつ伏せていた身体を持ち上げてこちらに身体を寄せてくる。目の前にまで迫ると、口元が綺麗な弧を描いて笑みをかたどった。それに引き寄せられるように柔らかな唇に口づければ、ふんわりと甘い香りがした。 「湯冷めしてない? 大丈夫か?」 「平気、大悟さんこそちゃんと温まった? なんか冷たいよ」 「あー、うん。今日は暑かったから」  手を重ねた雪近は心配そうな顔で首を傾げる。けれどやましい気持ちを見透かされそうで合間に笑ってしまった。 「まあ、これからもっと熱くなるようなことするけどね」  目を細めて笑うその表情があだっぽくて、また心臓が早鐘を打ち始める。四つん這いになっているから、視線を下ろすと胸元やくびれのある腰がやけに目につく。これはもはや視覚の暴力だ。

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