31 / 35

第31話 甘い果実の香り 1

 可愛くて愛しくて、触れるたびに感情があふれ出す。何度も刻みつけるみたいに身体を繋げて、腕の中に閉じ込めて、唇が腫れそうなほど口づけた。しつこいくらい押し開いて、最後のほうはほとんど泣かせてしまった。それでも気持ちは収まるどころか膨れ上がる。好きだよってなだめるみたいに繰り返し囁いて、それに応えるように縋りついてくる雪近に堪らなくなって、馬鹿みたいにきつく抱きしめた。  その身体を離した時にはもう出すもの全部出し切った感じで、疲労感が半端なかった。それでも腕の中で眠る顔を見たらそれもどこか吹っ飛んで、幸せを噛みしめてしまうほどだ。でもいままで自分がこんなに性欲が強いとは思っていなかったから、半分くらい使ってしまったゴムを見て我ながらかなりドン引いた。  これだけしたらそりゃあ、疲れるし意識も飛ぶはずだ。散々無理をさせて、最中に二回くらい失神させたのは反省している。本当に自分でも驚くほどだ。  目を覚ましたら目いっぱい甘やかしてやろう。なんでも言うことを聞いてもいい。 「ゆーきー。もう昼過ぎたぞー」 「んー」 「ご飯買ってきたから、飯食おう」 「うーん」  寝ている雪近のために閉めていたブラインドカーテンを薄く開くと、夏の陽射しが少しだけ部屋に広がる。けれどベッドの上でタオルケットを被っている雪近は、唸り声を上げるもののまったく動かない。そっとベッドの端に腰かけて肩を揺すると、小さく身じろぐ。ほんの少し見えている頭のてっぺんにキスを落とせば、くすぐったそうに肩をすくめた。 「身体きつい? 大丈夫か?」 「ん……へ、いき」 「雪? もう一回。ちょっと、あーって声出してみろ」 「あ゛ぁ、んんっ」 「お前、声カスッカスだな」  いつもは通る声が喉に引っかかったようなガラガラとした音を響かせる。少し苦しそうに喉で咳をする雪近はもぞりと寝返りを打ってこちらを向いた。ようやくタオルケットから覗かせた顔は眉を寄せて少し辛そうだ。手を伸ばして頬を撫でてやると、すり寄るように顔を寄せてくる。 「こ、え、出し過ぎた、かも」 「夜にエアコンもつけっぱなしだったし、乾燥したかな。ちょっと待ってろ」 「うん」  こちらをじっと見つめる雪近の額に口づけて、ベッドから離れるとキッチンへ足を向けた。

ともだちにシェアしよう!