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第33話 甘い果実の香り 3

 生ハムとナスのオリーブオイルパスタと海老のトマトソースパスタ。マルゲリータに彩り鮮やかなイタリアンサラダ。それを見ながら笑みを浮かべる雪近に椅子を引いて座らせると、俺も向かい側に腰を下ろす。 「雪、誕生日おめでとう」 「ありがとう」 「よし、好きなだけ食え」 「いただきまーす」  両手を合わせると思い思いに皿から取り分ける。見た目もいいが、ここの料理は味もかなりいい。口に運んだ雪近の顔も好感触だ。すらっとしているのに食べるのが好きだから、雪近は人の倍くらいはぺろりと食べてしまう。俺は酒があればそんなに食べなくてもいいので、昨日買っておいた缶ビールに口をつけると、美味しいものを食べてご機嫌になった雪近を眺める。 「ケーキも買ってきたから、腹に余裕持たせておけよ」 「平気、全然食べられる」 「お前の胃袋には毎回驚かされるな」 「大悟さんが小食なんだよ」 「いまさら食っても育たないからな。雪、口のところ、ソースついてる」  目を瞬かせる雪近にトントンと指先で口の端を示せば、大雑把に口元を拭ってべろりと手のひらを舐める。子供みたいな行動だけど、舐め上げる赤い舌がちょっといやらしくて目を細めてしまう。真っ昼間から俺の思考は相変わらず邪だ。 「ねぇ、大悟さん」 「ん? なんだ?」 「今日も泊まっていい?」 「……いいけど、襲わない可能性はゼロじゃないぞ」 「んふふ、いいよ。昨日は大悟さんの好きにされちゃったけど。今夜は俺が大悟さん泣かせてあげるから」  にっこりと微笑んでそんなことを言われたら、まためちゃくちゃに泣かせたくなる。俺を煽っているのに気づいているのか、いないのか。まあ、乗り気なのは大歓迎だけど。それに結構雪近もタフだな。昨日あれだけやったのにけろっとしてる。  元々丈夫だし、体力もあるし、気にしなくても大丈夫なのだろうが、ほかのやつともこんな感じだったんだろうか。素行が派手って噂されるくらいだから、かなりお盛んだったのは想像できる。雪近も若いし、淡泊そうに見えるのに性欲は旺盛な感じがする。 「大悟さーん、ケーキ!」 「あ、もう食ったのか?」 「うん、ご馳走様。……それより、どうしたの? そんな難しい顔して」

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