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第3話
「……高志はさ、もし自分の好きな人が、誰にも言えない秘密を抱えてたとしたらどうする? 出来れば知りたいなって思う?」
風呂場での事じゃなかったかと一瞬安堵したが、好きな人、と聞いて冷や汗が出た。
未樹がこんな事を言うなんて、初めてだ。
もしかして、これを相談したくて俺を家に泊めたのか。
「えっ、未樹、もしかして好きな奴でもいんの~?」
「……うん」
努めて明るく訊いたけど、少し照れたような未樹の返事に言葉を失う。
とうとう、この時が来てしまった。
未樹が好きな女。そいつを勝手に思い浮かべて嫉妬したけど、それがバレないように平然を装った。
「そうだなぁ…そいつが言う気が無いんだったら無理には聞かねぇな。人に言えない秘密の一つや二つ、誰にだってあるだろ」
俺だって、好きだからこそ隠してる。
未樹の裸を想像して、脳内で犯してる。何度も何度も。
その白く透き通った肌を紅く染めて、めちゃくちゃにしてやりたいって思ってんだ。
そんなの隠すし、人には言えないだろ普通。
「そう思う?何なんだろうって気にならない?」
「…なんねーよ」
「…好きな人の全部を知りたいって、本当に思わない?」
「だから、そいつが言いたくないんだったら別にいいって言ってんだろ」
しつこい未樹に、ムカムカとして不機嫌になる。
誰とそんな話したんだよ。クラスの女か?そんなに仲良くしてた奴、未樹にいたっけ。
もう辞めてくれ。
俺は少しだけ滲んでしまった涙をこっそり拭う。
未樹はただ言わなかっただけで、俺の知らない所でいい感じになってる女がいるのかもしれない。
いいよなぁ女は。女ってだけで、未樹と思いが通じ合えるかもしれない希望があるんだから。
ノンケを好きになると苦労する――
本当だな、それ。
「そっかぁ。高志、俺…」
「あーなんか超眠たくなってきた。もう俺寝るわ。おやすみ~」
「……え?あ、うん…おやすみ…」
これ以上傷つきたく無くて、俺は頭から布団を被って目を閉じた。
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