5 / 22

3.水曜日、赤坂の作戦

赤坂莉菜視点 「あら会長は? 」 「まだ来てませんよ」  私は2週間前、会長が恋をしていると知り、条件付きで応援をすると約束した。その条件とは、会長職を疎かにしないこと。業務は昼休みの内に終わらせ、放課後に会いに行くようにと促した。  そんな昼休み。会長は毎日必ず一番に現れ、業務をてきぱきと終わらせていた。なのに今日はいない。早速破る気なのかあいつ……!  捜しに行こうと回れ右をしたその時、生徒会室から書記の真美ちゃんの声がした。 「すぐ戻ると言ってましたから、大丈夫ですよ~。どうせ、お昼ご飯渡しに行っただけでしょうから」 「そんなの朝に──って無理か。はあ、全く、しょうがないわね」  なにせご飯でおとせとアドバイスしたのはこの私だ。しかしまさか3食全て作るだなんて思わなかった。しかも大量に作り置きをしたらしい。主婦か主婦なのかあいつ。  自分の席に座り、お弁当を食べながら書類に目をとおしていたその時。頬を微かに赤らめた会長が現れた。……お前は乙女かよ。  会長は咳払いをし、切り替える。 「本当は一緒に食べたかったが、書類は一杯あるんだろ? 」 「ええ、そうよ。前会長がほんの少しおサボりしたつけがたまっているのよ」 「ったく……」  会長は席に着き、お弁当を食べながら書類に目をとおす。私は私でさっさと食べ終わり、書類整理を始める。  実は前会長はあまり真面目ではなかった。生徒会会長権限を余すことなく使い、また仕事は主に書記と副会長任せ。副会長がぶっ倒れてからは書記ばかりが仕事をしていた。私も書記だったが、あれは辛かった。 そんな前会長は色々と面倒事を残したまま任期満了となった。しかもそのあとは引き継ぎ作業にも姿を見せないんだから、ひどいったらありゃしない。  これで恋が実らなければ、前会長のせいにしておこう。  昼休みが終わり、会長は舌打ちをする。結局今日も仕事は終わらなかった。 「あぁ……いつになったら昼休みデート出来るんだよぉ……」  ──会長、ドンマイ!  午後の授業を終え、放課後。私と真美ちゃん、それから保健委員会の委員長である志帆は保健室横にある第二保健室にいた。  ここは年に一度ある健康診断で使われたり、重病人が迎えを待つ部屋としても使われたりする。しかし、月曜日からは会長の邪魔をしないためにと臨時保健室となっていた。私が志帆にお願いしたら、快諾してくれた。(理事長にもそれとなく話したら了承してくれた)  部活動中の怪我というのは意外と多いもので、臨時保健室を作って正解だったと痛感した。今日も怪我人が何人かやって来て、少し騒がしかった。 「18時10分……そろそろ室見くんに連絡する? 」 「あー、お願い、志帆」  会長の親友であり、書記の室見義之。彼は会長のお迎え係だ。  志帆が連絡をし、室見くんは30分までに来るとの返事が来た。  片付けをしながら志帆や真美ちゃんと話をする。 「しっかし会長、よく理性抑えれてるよね。あんな性格なのにさ」 「いやいや、先生の前じゃ料理得意なわんこ系を演じてるから、多分大丈夫」 「えー、そおかな? 」 「わんこ系が急に襲いかかるって展開はありがちですからね~。明日にでも理性は飛ぶ気がします」 「う……明日は面倒だわ……」 「あはは……だね……」  実は外泊届けは週末以外はあまり承諾されない。基本的に寮の管理人が渋い顔をして破り捨てる。月曜日はそれを頑張って引き留めたという経緯がある。明日は木曜日。週末じゃないし、厳しいだろう。会長にキツく言っておこう。  片付けも終わり、私達はそれぞれ帰宅する。私以外は寮生じゃないので、校門の所で別れ帰路に着く。  ──会長、うまくいくといいな。

ともだちにシェアしよう!