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2年生の夏

 それから季節は流れ、7月。あれから俺はこの3ヶ月間、保健委員会の委員長をしている佐原志帆から様々な情報を手にいれていた。  先生は週末には必ずゲイバーに行くだとか、好きな料理は肉じゃがだとか、卵焼きは甘い味付けが好きだとか。一体どうやってこんなに、と聞いたら、保健室に出入りしている園田漣という黒瀬先生の幼なじみから情報を得たと答えてくれた。  今日からは夏休み。あの日以来、ほとんど会話を交わしていない莉菜との約束がいくつかある。それだけが憂鬱だ。そう思いながら歩いていると、見慣れない男に出くわした。 「こんにちは、速水くん」 「こ、こんにちは……」 「君がしょーちゃんに恋しているという子かな? 」 「へ!? 」 「ああ、怯えなくていいよ。僕は園田漣。志帆ちゃんにせがまれて色々情報を提供していた医者だよ」 「は、はあ」  どうして俺の名前を!? と思ったら、園田さんは丁寧に説明してくれた。園田さん曰く、幼なじみで大親友である黒瀬先生の情報を悪用されては困るため、佐原から誰のためなのかを事前に聞いていたという。 「それでね、その速水くんに興味が湧いてきて。一番大事なことは直接伝えたいなあって」 「はあ、なるほど」 「良かったらついてきて。ここだと、見つかったら怒られるし」 「分かりました」  彼についていき、学校の隣にある病院の裏へ。そこには病院と同じようにそこそこ立派なマンションがあった。──まあ、俺の父親が管理するマンションに比べると少し小さいが。  その1階の部屋に案内され、向かい合って椅子に座る。コーヒーを差し出されたので、飲みながら話を聞く。 「さすがに志帆ちゃんには伝えづらい話をするけど、いいかな」 「ええ」 「しょーちゃんは、約2年前まで彼氏がいたんだよね。それでその彼氏にはこっぴどく振られて。以来ずーっと、タチなんだって」 「え、つまり、その彼氏と付き合っていた時は……」 「ネコだったんだよ、しょーちゃん。まああれだけ中性的な顔立ちなら仕方ないよね」 「ですね」 「僕の知ってる情報はこれぐらい、かな。ああ、そうだ、よければアルバムでも見る? 小さい頃は大半が女子みたいな見た目の写真だけど、それでもよければ」 「あ、はい、ぜひ」  しばらく待っていると、やたらとたくさんアルバムを抱えて戻ってきた。それに驚いていると、苦笑しながらアルバムが多い理由について話し始める。 「実はさ、しょーちゃんのお姉さん達から無理やり渡されたんだよね。うちの可愛いしょーちゃんです、って。いらないし、しょーちゃんに見つかると正直ヤバイからあげるよ」 「え、いいんですか!? 」 「いいよ」  園田さん、すごくいい人だ。  アルバムをめくっていくと、恐らくお姉さん達の仕業であろう女装姿の黒瀬先生ばかりが目につく。幼い頃、お姉さん達によって女装をされたせいで可愛いという言葉をひどく嫌っていると聞いていたが、確かにこれはトラウマレベルかもしれない。  とりあえず数ページじっくり見て、あとは持ち帰ることにする。義之がびっくりしたらあれだし、マンションにでも持ち帰ろう。

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