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「いいんだ。理津は謝ることないよ。僕の方が悪い」
「佳孝さん。お願い。僕を見捨てないで」
抑えていた涙が溢れ出し、視界が滲んでいく。
ここでずっと一人。孤独を抱えて生きなきゃいけないのかもしれない。そう思って生きていた時に、佳孝に救われた。佳孝の温もりを知ってしまった今、それを失うほど怖いものはなかった。
「見捨てなんかしないよ。来年も絶対にここに来るから」
「本当に?」
「本当だよ。約束する」
真剣な声で佳孝は言っていても、理津の不安は消えない。
「佳孝さん……」
「ん?」
「もう一回、温めて」
繋ぎ止めておける術――
これが間違っているだとか、道徳や倫理に反しているだとか、そんなことどうでも良かった。
自分には佳孝しかいない。痛くても、苦しくても、なんにも得られなくたっていい。
「理津……」
身体が反転し、再び布団に背が付いた。見上げた佳孝の表情はどこか苦しげだった。
昼過ぎに佳孝を見送る為、理津は本館の外に出た。
失望するほどの青空。憎らしいほどに煌めく、地面の白い雪。何もかもが、絶望の色としか目に映らない。
「理津くん。何かあったらすぐに連絡するんだよ」
母に聞こえるように佳孝が言うと、理津を心配そうに見つめた。
「……はい」
小さく頷くと、母が「辛気臭いわね。シャキッとしなさいよ」と言って、理津を睨めつける。
「姉さんがいるから、萎縮するんだ。見送りは理津くんだけで充分だって、言っただろう」
僅かに眉間に皺を寄せ、佳孝が言う。
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