11 / 13

11

「いいんだ。理津は謝ることないよ。僕の方が悪い」 「佳孝さん。お願い。僕を見捨てないで」  抑えていた涙が溢れ出し、視界が滲んでいく。  ここでずっと一人。孤独を抱えて生きなきゃいけないのかもしれない。そう思って生きていた時に、佳孝に救われた。佳孝の温もりを知ってしまった今、それを失うほど怖いものはなかった。 「見捨てなんかしないよ。来年も絶対にここに来るから」 「本当に?」 「本当だよ。約束する」  真剣な声で佳孝は言っていても、理津の不安は消えない。 「佳孝さん……」 「ん?」 「もう一回、温めて」  繋ぎ止めておける術――  これが間違っているだとか、道徳や倫理に反しているだとか、そんなことどうでも良かった。  自分には佳孝しかいない。痛くても、苦しくても、なんにも得られなくたっていい。 「理津……」  身体が反転し、再び布団に背が付いた。見上げた佳孝の表情はどこか苦しげだった。  昼過ぎに佳孝を見送る為、理津は本館の外に出た。  失望するほどの青空。憎らしいほどに煌めく、地面の白い雪。何もかもが、絶望の色としか目に映らない。 「理津くん。何かあったらすぐに連絡するんだよ」  母に聞こえるように佳孝が言うと、理津を心配そうに見つめた。 「……はい」  小さく頷くと、母が「辛気臭いわね。シャキッとしなさいよ」と言って、理津を睨めつける。 「姉さんがいるから、萎縮するんだ。見送りは理津くんだけで充分だって、言っただろう」  僅かに眉間に皺を寄せ、佳孝が言う。

ともだちにシェアしよう!