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「セーラー服じゃないの?」  図書室で自習をしていた俺の背後に立った東城先生が、耳元に口をつけて生暖かい息を吹きかけてきた。 「俺、男なんで」 「知ってる」 「着るわけない」 「昨日は着てた」  俺が先生を睨むために振り返ると、にやりと口元を緩めて笑っていた。  その笑みがまるで馬鹿にされているように感じられて、腹がたつ。俺だって好きであんな恰好をしているわけじゃない。  家のため。というか、学費のため。いや、小遣いのため、かもしれないが。とりあえず、親父のおかまバーが繁盛すれば、売上はあがるわけで。売上がよければ、俺たち親子の生活が潤うってもんだろ。  親父いわく、俺は母さんに似て美人らしいから。男が美人ってなんだよって思ったけど。親父も、親父の恋人も「美人だから」って。  まあ、ためしに女の恰好をして店に出たら……まあ、なかなか評判が良かったってだけ。ほんとにそれだけ。  俺は根っからの男だし。女が好きだ。目の前にいる男に食われるような男じゃない……はずだ。  昨日のは、口止めであって、決してそういうもんじゃない。愛だとか恋だとかそういった色のついた感情はない。同性にそんな感情、湧くわけない。 「今夜行くから。制服着て、待ってろ」  東城先生が俺の肩をポンと叩くと、離れていった。図書室の本を借りるのか、入り口で図書カードを差し出している姿を俺は睨みつけてやった。
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