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『知ってる』じゃねえだろう。知ってる奴の行動じゃねえっての。  一晩中、愛してあげる……とか言いやがって。ただ一晩中、俺を抜かして遊んでただけじゃねえか。  あんなの愛じゃねえ。変態行為だ。セーラー服を着せたまま、俺を勃起させて、イキまくる俺を見て楽しんでただけ。変態野郎だ。 『記念にパンツをもらう』って。ど変態の極みだろ。パンツもらうってなんだよ。女モノのパンツが欲しいなら、ネットで買いやがれ。  俺の仕事用のパンツは、記念品じゃねえっての。おかげで帰り道、股がスース―して気持ちが悪かった。 「東城先生ぇ、この問題教えて。わかんないんだあ」  化学の準備室で資料を片付けにきた背後で、専任教師の東城先生に質問しにきている女子の声が聞こえた。甘ったるい女子特有の鼻にかかる声が耳に入ってくる。  カマバーに通う変態教師の東城先生だが、学校ではクールでイケメン教師としてそれなりの人気がある。とくに女子だが。熱烈なファンクラブまであるらしいという噂もある。本当かどうかわからねえが。女子なら作りかねない。  遠くで見ている分には、確かに整った顔立ちで、ほどよい筋肉もあるし、まあ人気があっても理解はできる。変態っぷりを知らない3日前だったらな。 「君は僕が担当しているクラスじゃない。質問は、担当の先生に聞いて」 「担当の先生の授業でわからなかったの」 「なら個別に教わるといい。僕は担当の生徒以外の質問は受けない」  つめてえな。聞きにきてるんだから、教えてやればいいのに。  資料のファイルを本棚にしまいながら、俺は心の中で呟いた。俺だったら、女子からの質問がきたら、誰でも教えるのに。もったいねえヤツ。変態教師なのに。 「パンツ履いてる?」  急に耳元で囁かれて、俺はびくっと肩を跳ね上がらせた。 「はあ?」 「だって、僕の部屋にパンツを置いていっただろ」 「エロ教師野郎が」  置いていったんじゃねえだろうが。お前に奪われたんだろうが。なに、俺が忘れていきましたあ……的な体で囁いてくんな。ここは学校だっての。場をわきまえろ。 「確認するぞ」 「すんな。エロ変態教師野郎。てか、質問に答えてやれよ。冷たいんだよ、あんたは」 「ん? 和泉には優しくしている」 「俺にじゃねえよ。さっきの女子生徒にだろ」 「優しくする必要がない。和泉に誤解されたくない。愛してないヤツに優しくするほど、心に余裕はないから。和泉でいっぱいなんだ」  ちゅっと音を立てて、俺の首に吸い付いた。 「ちょ……」と俺は振り返ると、抱き着いて来ようとする変態教師の腕を払った。 「そもそも何をどう誤解すんだよ。あんたは化学の教師。俺はこの高校の生徒。さっきの女子も生徒」 「冷たいのは、和泉のほうだ。僕の気持ちを知っていて、足を広げるのに。最後までは許してくれない」 「はあ? 勝手に襲っておいて何を言うか」 「好きって告白しただろ」  東城先生がぎゅうっと俺を抱きしめてきた。 「いや、だから。おかしいだろって。俺はノンケだから」 「昨日は何度も僕の口と手でイッだろ」 「……そこを言う? あんたが勝手に刺激してきただけだろうが。あそこに感情は関係ねえだろ」  俺は東城先生の腕の中から抜け出ると、睨み上げた。 「一晩中、丁寧に愛した。好きじゃなかったら、とっくに穴にぶちこんでる。和泉は好きだから、ゆっくり開発したい」 「下品な言い方してくんな。ただの制服マニア野郎だろが」 「違う。和泉のセーラー服姿が好きなんだ」  どっちにしても、変態だろうが。俺のセーラー服が好きってなんだよ。恥ずかしいことをさらっと口にしてんじゃねえよ。 「学校で話すことじゃねえ」と俺は先生の胸の押した。 「今夜も店に行くから。そこで続きを」  先生が俺の額に軽いキスをした。  だから、それも学校ですんな。エロ教師が。  俺は、フンっと鼻を鳴らすと、化学の準備室を後にした。

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