6 / 10
06
『知ってる』じゃねえだろう。知ってる奴の行動じゃねえっての。
一晩中、愛してあげる……とか言いやがって。ただ一晩中、俺を抜かして遊んでただけじゃねえか。
あんなの愛じゃねえ。変態行為だ。セーラー服を着せたまま、俺を勃起させて、イキまくる俺を見て楽しんでただけ。変態野郎だ。
『記念にパンツをもらう』って。ど変態の極みだろ。パンツもらうってなんだよ。女モノのパンツが欲しいなら、ネットで買いやがれ。
俺の仕事用のパンツは、記念品じゃねえっての。おかげで帰り道、股がスース―して気持ちが悪かった。
「東城先生ぇ、この問題教えて。わかんないんだあ」
化学の準備室で資料を片付けにきた背後で、専任教師の東城先生に質問しにきている女子の声が聞こえた。甘ったるい女子特有の鼻にかかる声が耳に入ってくる。
カマバーに通う変態教師の東城先生だが、学校ではクールでイケメン教師としてそれなりの人気がある。とくに女子だが。熱烈なファンクラブまであるらしいという噂もある。本当かどうかわからねえが。女子なら作りかねない。
遠くで見ている分には、確かに整った顔立ちで、ほどよい筋肉もあるし、まあ人気があっても理解はできる。変態っぷりを知らない3日前だったらな。
「君は僕が担当しているクラスじゃない。質問は、担当の先生に聞いて」
「担当の先生の授業でわからなかったの」
「なら個別に教わるといい。僕は担当の生徒以外の質問は受けない」
つめてえな。聞きにきてるんだから、教えてやればいいのに。
資料のファイルを本棚にしまいながら、俺は心の中で呟いた。俺だったら、女子からの質問がきたら、誰でも教えるのに。もったいねえヤツ。変態教師なのに。
「パンツ履いてる?」
急に耳元で囁かれて、俺はびくっと肩を跳ね上がらせた。
「はあ?」
「だって、僕の部屋にパンツを置いていっただろ」
「エロ教師野郎が」
置いていったんじゃねえだろうが。お前に奪われたんだろうが。なに、俺が忘れていきましたあ……的な体で囁いてくんな。ここは学校だっての。場をわきまえろ。
「確認するぞ」
「すんな。エロ変態教師野郎。てか、質問に答えてやれよ。冷たいんだよ、あんたは」
「ん? 和泉には優しくしている」
「俺にじゃねえよ。さっきの女子生徒にだろ」
「優しくする必要がない。和泉に誤解されたくない。愛してないヤツに優しくするほど、心に余裕はないから。和泉でいっぱいなんだ」
ちゅっと音を立てて、俺の首に吸い付いた。
「ちょ……」と俺は振り返ると、抱き着いて来ようとする変態教師の腕を払った。
「そもそも何をどう誤解すんだよ。あんたは化学の教師。俺はこの高校の生徒。さっきの女子も生徒」
「冷たいのは、和泉のほうだ。僕の気持ちを知っていて、足を広げるのに。最後までは許してくれない」
「はあ? 勝手に襲っておいて何を言うか」
「好きって告白しただろ」
東城先生がぎゅうっと俺を抱きしめてきた。
「いや、だから。おかしいだろって。俺はノンケだから」
「昨日は何度も僕の口と手でイッだろ」
「……そこを言う? あんたが勝手に刺激してきただけだろうが。あそこに感情は関係ねえだろ」
俺は東城先生の腕の中から抜け出ると、睨み上げた。
「一晩中、丁寧に愛した。好きじゃなかったら、とっくに穴にぶちこんでる。和泉は好きだから、ゆっくり開発したい」
「下品な言い方してくんな。ただの制服マニア野郎だろが」
「違う。和泉のセーラー服姿が好きなんだ」
どっちにしても、変態だろうが。俺のセーラー服が好きってなんだよ。恥ずかしいことをさらっと口にしてんじゃねえよ。
「学校で話すことじゃねえ」と俺は先生の胸の押した。
「今夜も店に行くから。そこで続きを」
先生が俺の額に軽いキスをした。
だから、それも学校ですんな。エロ教師が。
俺は、フンっと鼻を鳴らすと、化学の準備室を後にした。
ともだちにシェアしよう!