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「ああ、どうして和泉はこんなに愛らしいんだ」  ベッドで、俺の太ももについているタトゥを見るなり、悶えるような声で東城が呟いてきた。  こいつの思考回路はどうやら、二ノ宮と似ているらしい。タトゥで萌えるタイプのようだ。 「僕にしかわからないシルシ。シールだけじゃ物足りないから、マークもつけようか」 「ちょ……なにを……」  東城が俺の太ももに噛みついた。「ああ」と俺は痛みで顔をゆがめた。 「キスマークじゃすぐに消えるから。歯形にした」  どっちも一緒だろ……って太ももに歯形って。 「なにしてくれてんだよ」  俺は身体を起こすと、太ももに視線を落とす。シールの横に、赤く歯形のあとがついている。 「ほんとは、僕のを奥まで入れて、吐き出したい。僕の匂いをつけて、誰にも触らせたくない」  東城がぎゅうっと俺を抱きしめて、首筋にキスをした。 「は? え?」 「今夜は何もしない」 「すでに噛みついておいて言う言葉かよ」 「これ以上は……しない」  東城が俺から離れると、寂しい表情を浮かべた。ベッドから降りて、東城はクローゼットを開けた。スーツを脱いで、シャツとスラックスの部屋着になると寝室を出ていく。  キッチンで何かをしている音が聞こえてくる。食器の音や冷蔵庫の開閉音も耳に入ってきた。  は? 何もしない? ここまで俺を連れて来ておいて。何もしない、のか。  セーラー服の姿で、スカートが捲れあがっている状態で足が全開で放置された俺は茫然となった。東城の意図していることがわからない。  ヤるために、俺を連れ込んだのではないのか。  俺もベッドから離れると、ドアを開けてキッチンにいる東城に近づいた。リビングで足を止めると、東城の料理姿を眺めた。 「なに、してんだよ」 「ん? 料理。夕飯、まだだろ? お通しとビールだけだったし。和泉も何も食べてなかったみたいだから」 「エッチは?」 「しない」 「なんで? そのために俺を連れ込んだんじゃねえの?」 「違う。可愛いから。他の奴に見せたくない。それだけ」  東城がにっこりと笑った。俺はそろそろと東城の後ろに立つと、ぎゅっと抱き着いた。 「抱きつくな」と東城の低い声に、俺はびっくりして肩を跳ね上がらせた。 「先生?」 「あ、ごめ。料理で煩悩を飛ばそうとしてるんだ。近づかないほうがいい」  俺は東城の身体から手を離すと、3歩ほど距離を開けた。  ……っていうか。俺、今……何、したよ? 自分から抱き着くって。ヤバいだろ。何してんだよ。 「あ……ああ。そうだよ、な」  俺は口元に手を置いて、よろよろとリビングのソファへと向かった。どすっと尻から落として座ると、かあっと熱くなる身体に焦りを感じた。  俺は、女が好きなはずだろ? なんで無意識で、男である東城に抱き着いたんだ? しかも『エッチは?』ってオネダリするような発言までして。何を考えているんだ。

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