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第11話 To make love is ...vain*

倭が瑛太を支えながら2人は家に辿り着いた。 瑛太はずっと手を引かれ、少し広いリビングにある革張りのソファーにストンと座らされた。 倭はジャケットを脱ぎ捨てネクタイを外して瑛太の横に座ると、瑛太の両肩を持ち抱き寄せた。 「倭?」 (いささ)か性急な行動に瑛太は戸惑い、倭にしがみつきながら倭の顔を伺うように上を向く。いつもと変わらない倭の柔らかな表情に、胸を撫で下ろした。 「ごめん……俺じゃない奴が瑛太を助けたの、少し妬いた。」 「あ……え、何、言ってんの……あの人は今日会ったばかりの学生だし。」 「でもさ、あんな瑛太見たの、俺も初めてなんだけど。」 倭の声が一瞬だけ厳しくなった。思わず瑛太は目をそらし、倭に縋った身体を起こした。 「あれ、ただ少しだけ…疲れただけだから……うん。ずっと緊張してたし……。」 瑛太は右の髪を耳にかける仕草をする。光るムーンストーンのピアス。倭は瑛太の右手に自分の左手を優しく重ねる。 「そう……ならいいんだけど。」 「うん、ごめん……心配かけて。」 お詫びというように、瑛太はソファに膝を乗せて、倭に近寄り、倭と向かい合わせになって膝に乗る。 細い腕を倭の肩に回すと、そのままキスをした。 「瑛太……シャワーは?」 「いい………ベッド、連れてって。」 (倭が抱いてくれれば、現実(いま)がちゃんと見えて感じられる、はず……。) 倭は瑛太を姫抱きにして寝室のダブルベッドに運ぶ。 「倭……今日、ゴムしないで……全部欲しい。」 「お前…明日も仕事だろ、だめだ。」 「お願い……後はちゃんと自分で……っ!」 瑛太は口を噤んだ。「自分でやる」という自立心の表明は倭への侮辱。倭は瑛太に対する庇護欲が常に飢えている。 「わかった……そんなに言うなら、全部くれてやる。」 ベッドに沈められた瑛太が見たのは、プライドをへし折られた誇り高き(オス)の憎悪。これを(なだ)めるのは(メス)の役目。 (俺から誘ったのに……恐くて泣きそうになる…。) 「んあぁっ!」 瑛太が着てたシャツのボタンは1、2飛んで、色の薄い乳首に少々の痛みを伴う快感は愛撫というより捕食のような行為で与えられる。 「や、ま……あぁっ!噛まないでっ!」 「瑛太は、少し刺激がある方が、好きだろ?」 カリッ、また噛まれた、もう片方は、キュッ、(つね)られた。 「ひゃあう!…あ、それ、ダメぇ…っ!」 「ダメじゃないだろ?…こっちの方が好きなくせに。」 数十分前の紳士な倭は何処に行ってしまったのだろうか。慣れたこと、とはいえ瑛太はこの恐怖を拭えないのは隠している本音。なんて思い(あぐ)ねいていると、また怒りを買う。 「瑛太、俺としてるのに…何を考えてるの?」 「ちが、何も…してない……。」 瑛太は急いで下半身も全て脱がされた。 「ほら、俺の言った通り…瑛太はこっちの方が好きなんだよな。」 「そんなの…ちが、あぁっ!」 「乳首だけで、出せるだろ?」 キュウッと強く抓られ、乳頭を潰され、ピリピリと刺激が神経を伝う。 (綺麗な手。あの子(静海くん)の手はもっと武骨で、固くて、美しいとは程遠い……。) ――静海絢也です……えーっと父と兄が漁師やってます…… 「あ、や、やだ…乳首、痛いぃ…。」 「そう、でも見てみなよ…瑛太のカウパー凄いよ。どんどん溢れてくる。」 両方の乳首はカリカリカリと弾かれて、キュウッと抓られ、執拗に繰り返されて、段々と瑛太のペニスは膨張をして限界が訪れようとしていた。 「瑛太、舌、噛んであげる。」 「あ、あぁ…ふあぁ…。」 だらしなく開いた口から舌を出すと、キスをされるのではなく舌先を(かじ)られ、瑛太の身体はビクビクと震えた。同時に瑛太のペニスは限界に達し飛沫は瑛太の胴体を汚した。 「はぁ…あぁ……。」 (ほんの少し触られただけなのに…忘れられない………思い出したくない……思い出したくない思い出したくない思い出しちゃいけない!――瑛ちゃ……お…で………しょ…う……み…… (また、見えなくなってくる。倭の顔が、よく見えない……どんな顔してるの、倭、は…そこにいるのは倭なの?) 「やまとぉ…はや、く……挿れて……。」 瑛太は精一杯に強請(ねだ)る。早く倭を感じたかった。それが倭への情愛ではないことを倭に悟られぬように。

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