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第14話 リンク。
戯れあっている3人の横を通り過ぎて足を進めると、自身の瞳にカラーで映り込んでいた学生に不意に腕を掴まれ、瑛太は驚きの余り其の手を強く振り払った。
『あっ。俺…つい…すみません。』
ーこの声…聞き覚えが有る。ー
振り返り、立ち尽くしている声の主に、訝しげな視線を向ける。
「君…誰?」
『。。え?五色さん?』
「俺の名前を知ってるって事は、成堂大の学生だよね?」
『は?ええ…そうすっけど。』
ー顔の輪郭も見覚えが有る様な。。ー
瑛太から予想だにしない問いを投げかけられ、戸惑いの色を浮かべていると、連れの2人が彼の元へと訪れた。
「シズちゃーん。朝っぱらからナンパしないで下さーい。」
『竜磨、煩せーぞ!そんなんじゃねーし!』
「うわっ。凄い綺麗な人じゃん。初めましてー。窪田 竜磨です!彼女募集中でっす!宜しくお願いしまーす。」
少し小柄な学生が挨拶と共に瑛太に右手を差し出すも、隣に居る細身の学生に遮られた。
「アホ2匹が朝からご迷惑をお掛けしてすみません。静海、竜磨、いい加減にしろよ。」
「酷えな、師岡。アホはシズちゃんだけだし!」
『はぁ?お前何言っちゃってんの?』
ーシズちゃん、静海、あっ…そうか。。ー
3人のやり取りを眺めながら、昨日出逢った学生の残像と目の前に在る人物の姿が瑛太の記憶の中でリンクした。
「君、、静海君?先輩のゼミ生の静海 絢也君だよね?」
『え?はい、そうですけど。まさか五色さん。。今、気が付いたんですか?』
「ああ…うん。」
申し訳なさそうに頷く瑛太を前にショックで呆然と立ち竦む絢也。
「え?何?シズちゃんの知り合いなの?」
「あ。五色さんってもしかして、陽川ゼミに来た先生の助手を務めてる人ですか?」
「はい。そうです。えっと…貴方達は…」
「俺の名前は師岡 皐です。隣に在る小さい奴は窪田 竜磨です。俺達は流通マーケティング科の学生です。」
ーそっか。この2人は初対面なんだな。ー
「マーケティング科の学生なんですね。陽川ゼミで助手を務める事になった 五色 瑛太です。」
「は?え?五色さんって杏菜が言ってた講師だか研究員だかって人の事?」
「ああ。」
ー昨日も同じような反応された気がする。ー
1人状況が掴めていない竜磨は、師岡に質問をぶつける。
「でも、それって確か、おと…」
「後でちゃんと説明してやるから少し黙ってろ。」
「ちぇっ。俺だけハブかよ。ってか、さっきから絢也が固まってるけど、何で?」
ー彼には先に事情を説明しておいた方が良さそうだな。昨日助けてもらったのに、気付かなかったとか失礼な話だし。。ー
「あの…静海君と2人で少し話しをさせてもらいたいんだけど、良いかな?」
遠慮がちに尋ねると、師岡は絢也の様子が可笑しい原因が瑛太に有るのではと察し、一も二もなく頷いた。
「はい。じゃあ、俺達はこれで失礼します。」
「うん。ありがとう。」
「竜磨、行くぞ。」
「へ?何で?」
「良いから来いっ!」
師岡は瑛太に一礼すると、竜磨の手を引きその場を後にした。
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