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第4話

「透君、開けてみて」 その白い箱に手をかけてみると、その辺で売っていないような深紅のサンタ色の物が入っている。透明ビニールから取り出しかざして見れば…それはいつかのデジャヴがそこにあった。 「素敵でしょ、これを恋人さんに着てもらって甘い夜を過ごして〜」 あの時とは違う深紅のレオタード。際どい切り込みの入ったサンタバニー…それもウサギ仕様… 「安っぽくないからきっと体のライン綺麗に出るわよ。それに網タイもお付けしちゃう!」 ありがた迷惑…すでに家には網タイツはあるんだが…三谷草は透の恋人が女だと思っている、それは普通の感覚で戸惑うように箱に戻し、脳裏に浮かんだサンタバニーの尚之を打ち消して蓋を閉めた。 「…有り難く頂いとく」 「やっぱ透君も雄ね、楽しんでね♡」 最後にハートマークが見えた気がした透は溜息を吐く。 「きっと透君の彼女なら綺麗な子でしょ。絶対似合う!出来れば写メ…「見せないから!」 遮るように返すと声を上げて笑った。 「透君もそんな顔するのね…サンタさん!プレゼントをありがとう!」 天に拝むように手を合わせる様に苦笑し、財布を取り出した。 プレゼントを手にし、いやらしい笑みを浮かべた三谷草に送られ店を出た。明日尚之が帰ってきたらクリスマスの買い出しに行こうと思っていたのだが、ワインは先に買っておこうとリカーショップに脚先を向ける。 バニー姿の尚之を酔わせて…と浮かぶ邪心は振り払い、尚之が好みそうな甘口のワインを買おうと言い聞かす。 (だってさ、男の夢じゃん。可愛く酔った恋人を抱いて泣かせてトロトロにしたいだろ…) 真昼間から邪心に弄ばれながら、ウキウキしている自分が滑稽だったがそれも尚之だからと浮かれ気分で向かう。 (仕方ないよ、俺も男だし…尚之の可愛く甘える様は大好物だしな…) ワインの品揃えが豊富なリカーショップ。この街に越してきて尚之と見つけた店。店主自身が買い付けに行くというレアなしなが揃っている。 尚之の喜ぶ顔を思い浮かべ人混みを歩いているとポケットからのバイブの振動でメールが来たことに気付く。 プライベート用のスマホだからこそ、胸が跳ねる。急いで画面を覗けば雪景色の中可愛い顔を見せる尚之の姿があった。しかも動画だと気付き指先は急ぐ。

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