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第5話
『透さん、見て凄い雪でしょ。また二人でこようね』
たった数秒の動画。鼻の頭を赤くしてクリクリさせた瞳で自分の名前を呼ぶ愛おしい恋人。釘付けになるというのはこういうことだろうと、食い入るように見つめニヤける顔を隠しながら急いで返事を返す。
『凄い雪だな。白い雪に尚之が映える。綺麗だな』
きっと『何言ってんの?男に綺麗って…』なんて言いながら頬を染めるに違いない。そう思いながら返信する。
どんな返事が返ってくるのかワクワクしながら待つ。長く離れていた感覚が戻ってくるようでもあった。顔を見て話してみても触ることができないもどかしさは辛くて寂しいものがあった。
一度でも会いたいと言ってくれれば飛んで帰ろうと思っていた。
だが尚之は透の体の心配ばかりで会いたいと寂しいと口にしたことはなかった。『透さんの顔が見れて嬉しい』と画面の向こうから微笑み、無理やわがままを言ったことはない。
それがもうどこにも行かないと言えば、寂しかった会いたかったと涙を零した。その可愛い尚之にもうこれ以上寂しい思いはさせたくないと思っている。
クリスマスイブになんで友達と旅行なんだよ。最初はそう思った。だが、久しぶりに友達に会えると喜んでいる尚之に行くなとは言えなかった。きっと離れている間、尚之の寂しさを紛らわす機会を作ってくれていただろう友達に感謝しなければいけないとさえ大人ぶってさえもいた。
『きっと、透さんのほうが雪に映える。透さんときたい。ご飯ちゃんと食べてね。明日帰るから』
帰ってきた返事に照れはなかった。きっと文字より先に口から出たんだろうと笑みが漏れる。
『楽しんでこいよ』
そう返し、 返信を待つと、
『早く帰りたい。透さんに会いたい』
(こんな時に会いたいは反則だよ尚之…飛んで行って抱きしめたくなる。明日には帰ってくるのに…
ああ…そうか…待ってる側は寂しい会いたいと言えば、相手を悩ませてしまうのか…)
相手の想いを叶えてやりたくて悩ませてしまう。無理をさせてしまうことになるということを今更ながら透は気付く。
(そりゃ…言えないし、言わないよな…)
会いたいと言って欲しかった。自分を欲しがって縋る尚之を抱きしめに帰りたかった。
だが、透のことを愛するが故、口が裂けても言えない言葉。会いたくても会えない状況からもう離れることはないと告げた時のあの涙、尚之の想いがひしひしと伝わってくる。
たった二日間でもこんな気持ちになる。尚之は五年もの間耐えてくれた。その想いの深さ、飽きられ気持ちが離れてしまってもおかしくない距離と時間。
ただひたすら待ってくれていた。
(愛されてるよな…俺…)
なら、目一杯楽しんでこい、帰ってくるのを待ってるからと言ってやりたくなる。
帰ってくることに躊躇うようなことは言いたくない。
『美味しいもの作って待ってるから。楽しんでこいよ』
そう返信し、脚を早めリーカーショップへと向かった。
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