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第8話

「ラブレターなんだ…僕の気持ちそこにいっぱい詰めたから…一人の時に読んで」 この歳になって、ラブレターをもらうなんてことは思いもつかなかった。 手触りでもかなりの枚数が入っている感じがする。 「嬉しいよ、尚之。読む前から感動してる…俺、ラブレターなんて初めてもらった」 過去、幾度も告白の類を受けたことはあるが、手紙をもらったことはない。文明の力が発達し、思いを託す手書きのものなんて風化しているようにさえ思える。 「それで?透さんのお願いって何?」 こんな雰囲気のいい場面でこれを出すのは忍びないのだが… あのバニー姿をもう一度見たいという願望が湧き上がってくる。 部屋の温度は快適にしてある。外から帰ってきてホッとできる温度をと…それとこの姿になるのならと期待に胸を膨らませ快適温度に設定してある。 白い箱を尚之に差し出し、後は地となれ山となれと念ずるように以後の様子を薄目で見る。 マジマジと箱を開け、取り出し、かざした所までは目を開けていた。その先はどうしても反応が怖く瞳を閉じた。 「透さ…」 驚愕していることぐらいわかる。あわよくば、真っ赤な顔をして頬を膨らませているかもしれない。 …うう。それは見てみたい… きっと可愛いに違いない。その誘惑に負けてもう一度薄目を開けて覗いてみる。 目の前の尚之は赤い顔を見せ、自分の身体に添わせそれを真上から見つめている。 …なんか、言ってくれ… もうこんなもの着ないから!そう罵ってくれてもいい。なんでもいいから一言言って欲しい。 そんな願いは虚しく…尚之は立ち上がり自室へと脚を向け、ドアを閉めた。 …怒らせたかな…やっぱ無理だよな…調子に乗って、いい雰囲気壊しちゃったな… ガクッと肩を落としソファを背にもたれ掛かる。温厚な尚之でも…変態じみた衣装を着て欲しいなんて言えば思いっきり引くだろう。 男の尚之にバニー姿なんて…ハロウィンのバニーは貰ったって言ってたもんな… 後は尚之が部屋から出てきたら平謝りで謝り倒そうと心に決め、その時間を待つことにした。

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