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【10】
「はぁ、はぁ……っ。ん……あ……っく!」
行燈の淡い橙色の光が淫らに絡み合う三人の影を御簾に映し出す。
その姿は大きな体を縦横無尽にくねらせて絡み合う蛇そのものだった。
それまで秘められていた過去がすべて明らかになった大祭から三日目の夜――蛇神たちの狂宴はまだ続いていた。
「――弥白。もっと……腰を高く……あげてっ」
『いい香りだ……。もっと乱れて、もっと美しくなるがいい』
四つん這いの格好で尻を高く上げたまま、後ろから灰英の長大なペニスで貫かれる。肌がぶつかり合う激しい破裂音が辺りに響き渡り、その狭間には何とも甘い嬌声が漏れた。
弥白の細い腰を掴んだ灰英の手が、自身との繋がりを深くするようにぐっと力任せに引寄せると「いやぁ……」と何度も首を横に振る。銀色の髪を濡らし、額から幾筋もの汗が流れ落ちていた。
快楽に震える体は、黒芭と同じものになった灰英の刺状の突起が生えた太いペニスを嬉々として銜え込み、奥へ奥へと誘い続ける。最奥の壁を硬い先端で突き上げられると、白い喉を大きく反らせて自らの欲望を放つ。
体を支えきれなくなった腕が崩れ、布団に倒れ込む寸前で黒芭の腕に抱えられる。
『いい顔だ……。弥白、愛しくて堪らない……』
顔を上向かせ、だらしなく溢れた唾液を纏わせた唇の輪郭に沿って唇を這わすと、それだけで弥白の体は小刻みに痙攣した。
「黒芭ぁ……」
『もっと甘えていい……。もっと委ねていい……。お前を満たせるのは我らだけなのだから』
「いい……。気持ち……いいっ。あた、ま……変に……なるっ」
赤い舌を伸ばして、焦らす黒芭にキスを強請る。そうすると、彼の中を蹂躙していた灰英のペニスがドクンと脈打った。
「んあぁぁっ」
「ほら、もっときつく締めないと、今まで注ぎ込んだ子種が溢れ出てしまうぞっ」
「あ、あんっ。かい……え、い……激し……い。もっと……奥……奥に、ちょ……だい」
「あぁ……。どんだけ出しても、まだお前を求めてやまない。これが我らが伴侶の力か……っく!」
繊細な粘膜を刺状の突起が引っ掻くように抽挿を繰り返す。蕾の入口ギリギリまで引き抜いてから渾身の力で突き込まれると、弥白の中が大きくうねり、咥えこんだ物を引き千切らんと執拗に喰い締める。
その圧迫感にさすがの灰英も眉を顰めて低く唸った。次々と訪れる射精感をぐっと押えこみ、弥白を悦ばせることに徹する。下手をすれば挿れただけで射精してしまいそうなほど、彼の中は熱く心地よい。先日の彼とは比べ物にならないほど、その姿は淫らで美しかった。
灰英と黒芭、交互に挿入を繰り返し、もう何度目の交わりなのかも分からない。
それでも、目の前に差し出された逞しい黒芭の楔を美味しそうに舐めしゃぶる弥白には疲労の色は見えなかった。
彼が絶頂を迎えるたびに、神殿に張り巡らされた結界が揺らぐ。黒芭と灰英が共に力を施して強化したものであっても、彼の喘ぎ声一つでいとも簡単に揺るがすことが出来るのだ。
その度に境内の方から吹き抜ける風が強まり、どこからともなく季節外れに咲く芍薬の花の香りが流れ込む。弥白が放つ妖艶な麝香の香りと、バラにも似た淡く仄かに甘い香りが相まって、黒芭と灰英の思考を狂わせていく。
「――くろ、は……。これ、頂戴……」
たっぷりとした陰嚢に舌先を這わせ、茎に向かって舐め上げた弥白が紅の瞳を細めて囁いた。
「二人の……子種……俺に、ちょ……だいっ」
『先程、注いでやったばかりではないか。灰英のモノでは物足りないか?』
「ううん……。かい……え、いの……気持ち、いいっ。でも――はぁ、はぁ……黒芭のも、欲しい……」
腹に付くほどに勃起した小ぶりなペニスが後方からの突き上げによってプルンと上下する。その度に白濁交じりの蜜が飛び散り、甘い香りを放つ。
心なしか下腹が膨らんで見えるのは、幾度となく大量に注がれた二人の精子が、それまで体に存在していなかった新たな器官に溜め込まれているせいだ。
真っ平だった弥白の腹がペニスと共に大きく揺れる。
「――あぁ、イきそ……。また……イク……ッ」
艶のある灰色の髪の毛先から汗の滴を滴らせながら低く呻いた。
「ちょ……だいっ! いっぱい、ちょ……だいっ」
肩越しに振り返った弥白の潤んだ瞳が苦しそうに眉をしかめる灰英を映した。
バランスよく纏った筋肉が、彼の動きによって張り詰めていく。ブレのない安定した動きが徐々に速度を増していく。
「やぁ……あ、あぁ……くる! あ……っは、俺も……イク……イク、イクッ」
「一滴も零すんじゃないぞ、弥白っ!――っく、あ……ぐあぁぁぁぁぁ!」
「ひっ――ぃ! あぁぁぁぁぁぁ――っ!」
弥白の最奥で大きく膨らんだ灰英の楔がもの凄い勢いで弾けた。刺状の突起が敏感になりすぎている粘膜を突き刺すかのように圧迫し、爛れそうなほどの熱を発する。
奥の壁面に叩きつけられる精液の熱さに、弥白は黒芭の楔を咥えたまま意識を失いかけた。
布団についた膝から腿、そして滑らかな腹筋、見事に反らされた背中から肩。そのすべてが彼から与えられる快感に酔いしれ、小刻みに痙攣したまましばらくの間止まらなかった。
蛇の精子の生存期間は長く、二年から三年は生きていると言われている。
神となった弥白の中に注がれた精子もまた、その体に宿り続け、数年後には二人の子を成す事は確実だ。
どれくらい「愛してる」と言っても心は満たされない。その確証が欲しいがために体を満たしている。
二人の愛情が強ければ強いほど、弥白の力は増し、この村の守護力は高まる。
「――っくお」
灰英が数回腰を揺らしながら抽挿を繰り返し、まだ力を保ったままのペニスをゆっくりと引き抜いた。
突起に纏わりついた白濁が引き抜かれると同時に糸を引きながら零れ落ちる。
ポタポタと質量のある音を立てて布団に落ちた精液。そして、数えきれないほどの情交ですっかり赤く熟れた弥白の蕾は愛らしくヒクヒクと収縮を繰り返しながら、白く細い糸を紡いでいた。
額の汗を拭うように乱暴に髪をかきあげた灰英は、自身のモノを咥えさせたまま弥白の髪に指を埋めている黒芭を見つめた。
「貴方も……。どんだけエロい顔してるんだよ……」
『そうか? お前こそ、食ってしまいたいほど愛らしい顔をしておるぞ?』
「じゃあ、食ってみるか?」
そう言いながら黒芭に近づくと、彼の唇に舌を差し込んだ。
歯列をなぞりながら厚い舌を誘うように絡ませると、黒芭から小さな吐息が漏れた。
黒芭の指先が灰英の胸の飾りを弾く。その場所は硬くしこり、わずかな刺激でも声が漏れてしまいそうなほど昂ぶっていた。
「んは……っ。んん……」
『何を遠慮している? 弥白の前では声も出せぬか?』
「ちが……っ。んっ!――はぁ、はぁ」
青い瞳を潤ませて黒芭の唇を甘噛みすると、彼は嬉しそうに口角を上げた。
『愛しい男……』
黒芭がそう呟いた時、弥白の口内で彼のモノが大きく脈打つを感じた。
突起の一本一本に舌を這わせるように愛撫していた弥白の喉が圧迫される。口を開いた鈴口から溢れ出た蜜の甘さに、薄れかけていた意識がハッキリする。
灰英の乳首を愛撫しながら見つめ合う黒芭に嫉妬するかのように、弥白は彼のペニスから口を離すと、体の向きを反対に変えた。そして黒芭に、先程まで灰英のモノが入っていた後孔を見せつけるように、尻たぶを掴んで割り開くと、そのまま勃起した彼の先端に押し当てた。
「んふ……っ!」
もう誰のモノとも分からない体液に濡れた敷布を掴みながら、内臓を押し上げるかのような強烈な圧迫感に吐息した弥白は、誘うように腰をゆらりと揺らし肩越しに黒芭を見やった。
自ら腰を沈め彼との繋がりを深めると、嬉しそうに口元を綻ばせた。
「二人の愛を……俺に、注いで」
布団に両手をついて腰を前後に動かし始めると、グポッと卑猥な音が後孔から漏れ始める。腹にたっぷりと蓄えた精液が潤滑剤の役目を果たすかのように、女性の腕ほどある黒芭のペニスを難なく咥えこんでいる。彼は動かずとも、快楽に酔いしれた弥白が腰を振るたびに、楔が打ち込まれたその薄い襞の隙間から白濁が溢れ出した。
『そんなに動いたら、せっかく注いだモノが出てしまうだろう?』
足を伸ばしたまま座る黒芭が繋がった場所を見つめながら苦笑いする。その唇の端に舌を這わす灰英もまた、彼から与えられる愛撫に荒い息を繰り返していた。
ついさっき放ったばかりのペニスは、すでに十分すぎるほどの力を蓄え、黒芭の愛撫に蜜を溢れさせている。
「だ……じょぶ。まだ……たりな、い。まだ……っんあ」
貪欲に腰を動かし、黒芭のモノを根元まで咥えこんだ弥白は、いい場所に当たるように腰をしならせて上半身を布団に押し付けた。
『弥白の蕾はイヤらしいな……。我のモノを咥えこんで離さん』
抽挿の際、入口の襞が捲れあがるたびに真っ赤な牡丹が咲き乱れたかのように開く弥白の後孔から目が離せない。
少しだけ腰を揺すって、彼の最奥の壁を硬い先端で突いてやると、崩れるように腰がぐにゃりと捩じれ、同時に堪らないというような甘い声が洩れる。
灰英の乳首を嬲っていた黒芭の手が下肢へと下りていく。そこには自身と同じ刺状の突起が無数に生えたペニスが何かを期待するようにピクンと跳ねていた。
『灰英……。まだ出したりぬか?』
「当たり前だ……。弥白と繋がるたびに力が……っく、漲って……っはぁ」
大きく張り出したカリを輪を作った指で丁寧に撫でてやると、灰英は息を詰めて顎を上向かせた。
自身の精液と弥白の体液がねっとりと絡みつくそれは、卑猥な光を放っていた。
「黒芭……っ」
まるで何かに焦らされているような顔で睨んだ弥白が甘ったるい声で黒芭の名を呼ぶ。
やはり、自身で動くだけでは満足出来ないようだ。
神となった今、弥白はどこまでも貪欲に二人を欲する。
注がれるモノは子を成す為だけではない。それを力に変え、さらに強い神へと成長する。
「んふっ……弥白が拗ねているぞ」
ペニスを愛撫されながら灰英が揶揄うと、黒芭は黙れと言わんばかりに鈴口に爪を立てた。
「うあぁぁ……んんっ」
『お前も協力しろ。もう、すぐにでも挿れられるようだからな……』
芯を持ち、完全に勃起した灰英のペニスにそっと唇を寄せてチュッと音を立てると、黒芭は布団にしがみつくように倒れ込んでいる弥白の細い腰に手を掛けて座ったまま彼を引き起こした。
「ふあぁぁ?」
不意に上体を起され、自重によってより深く繋がった弥白は、声にならない声を上げた。
後ろから羽交い絞めされるように、両脇に手を入れられて固定された弥白の汗ばんだ項に黒芭は何度もキスを落とした。
濡れた銀色の髪が襟足に張り付き、さらにそこから立ち上る甘い香りに下肢が熱くなるのを感じた。
『気持ちいいか?』
黒芭の腿を跨ぐ様に大きく脚を広げたまま、何度も首を縦に振る弥白の唇から銀色の糸がつつっと垂れた。
二人からの愛撫で十分に膨らんだ胸の突起を黒芭の長い指が摘まんだ。それを捏ねるように、時にはきつく捩じりあげるようにしてやると、弥白は中に穿たれたモノをキュッと喰い締め、何度も繰り返される快感に嬌声を上げた。
『――灰英、上の口が寂しそうだ。お前のを咥えさせてやれ』
「かい、え……頂戴……っ」
虚ろな目で振り返ると、自身の手で扱いていたモノがドクンと脈打った。
弥白の懇願に抗えない。それが契りを結んだ永遠の伴侶の運命なのだ。
彼の声に導かれるように立ち上がった灰英は、下から突き上げられながらも欲しがる弥白の前に立つと、赤黒く充血したペニスを見せつけるように腰を突き出した。
それに応えるように舌先を伸ばしながら口を開けた弥白に、獰猛な先端を突き込むと喉の奥まで一気に沈めた。
「がはっ……っぐ……ぼっ」
むせ返りながらも、喉の奥を収縮させて灰英を迎える弥白の紅の瞳が一層輝き始める。
彼の体が悦びに打ち震えている証拠だ。弥白を生かすのは二人の愛。そして、二人を生かすのは弥白と玄白の愛。
互いの愛情が一つになる時、弥白の体も心も満たされる。
「あぁ……。弥白……気持ち、いいよ……」
灰英が弥白の頭を鷲掴むように引き寄せると、黒芭が大きく腰をグラインドさせる。
「むぅ……っ! んん……んぁ……っくぅ」
上と下、両方の口を塞がれた弥白は二人の真実の想いを汲み取っていた。
同時に、灰英の両親を事故死に見せかけて殺す正幸の父親の姿が断片的に入り込み、胸が苦しくなるのを感じていた。眉間に寄せられた深い皺……。それは口淫での苦しさではなく、灰英が知らない事実が見えてしまったためだった。
何も知らず、ただ水神の血を引く一族というだけで黙ることしか出来なかった彼の想い。
誰にも相談することもなく、独りで抱え込んできた蛇神守という重圧。
そのシガラミから早く解放してあげたい。
弥白の紅の瞳に薄らと金が混じる。その変化に気付いた灰英は妖艶な美貌に息を呑んだ。
「弥白……。その瞳はっ」
「――灰英。貴方を苦しみから解き放ってあげる」
愛おしげに濡れたペニスに頬を寄せ、上目づかいで彼を見上げる弥白の肌がぼんやりと輝き始める。
「大切な伴侶を苦しめてきた人たちに罰を与えなきゃね……」
「弥白、お前……何をっ」
銀色の髪がふわりと風を孕ませる。後ろから抱きしめている黒芭の長い髪も渦を巻く。
黒芭は、驚いたまま動けずにいる灰英にそっと目配せをすると、弥白の耳朶を甘噛みしながら囁いた。
『お前の手を汚すに値しない輩だ……』
耳に吹きかけられた息をくすぐったいと言わんばかりに肩をすくめて喉の奥で弥白が笑った。
「この俺が手を汚す? クスッ……。黒芭、おかしなことを言うね?」
灰英のペニスに口づけながら微笑んだ弥白の唇が綺麗な弧を描く。
「――正義と悪は紙一重。邪神の妻が荒ぶることは許されない? この村を守るために、負となる要素は即刻排除する必要がある。でも……この手は汚さないよ。貴方たちに触れる神聖な手だからね」
意味深な言葉を紡ぐ弥白の唇が艶を帯びていく。灰英の蜜を纏わせたそれを舌先で掬うように舐めながら、彼は黒芭に凭れかかるように後ろへと倒れ込んだ。
弥白の体を支えながら共に倒れ込んだ黒芭の両足が彼の足を絡め取る。
深く繋がった場所を灰英に晒すかのように、大きく脚を開いたまま仰向けになった弥白が細い指先を伸ばした。
「来て……灰英。俺に……力を頂戴……」
その声は神というよりも、淫らに誘う邪神の囁きに聞え、灰英は背中にゾクゾクとしたものが走るのを感じた。
伸ばした指先をそっと掴み、その場に膝をついた灰英。黒芭の楔を咥えこんだまま、なおも彼を誘う凛とした声に抗うことは出来なかった。
『――灰英。共に繋がろうぞ』
布団に長い黒髪を散らし、弥白の背中を抱きしめたままの黒芭が優しい声音で囁く。
ゴクリと唾を呑みこんだ灰英は、それが何を意味する言葉なのかすぐに理解できた。
(これが本当の契りの儀式……。神としての弥白を目覚めさせる)
腰の奥で渦巻く熱。それが出口を求めてぐるぐると巡っている。そのもどかしさに、自身のペニスを数回扱きあげると、灰英は大きく引き伸ばされている薄い粘膜に先端をそっとあてがった。
真っ赤に売れた蕾は予想以上の柔軟性を見せ、その先端を咥えこもうとさらに大きく口を開けた。
グチュ……。
濡れた黒芭の茎に沿うように先端を押し込むと、弥白の腰がわずかに撥ねた。
それに気づいた黒芭がその腰を両手でがっしりと固定すると、弥白の首筋を舐めながら金色の瞳を灰英に向けた。
(早くしろ……。弥白の熱が冷めてしまう前に)
頭の中に直接語りかける黒芭の声に、灰英はぐっと腰を前に進めた。
「んあぁぁぁ――っ!」
処女と見紛うほど慎ましやかに鎮座していた弥白の後孔があり得ないほど引き伸ばされる。そこには女性の腕二本分のペニスを咥えこんだ蕾が見事に綻び、大輪の花を咲かせていた。
「うぐっ……。キツ……いっ」
先端を沈めた灰英は強烈な圧迫感に眉を顰める。しかし、弥白は掴んだ手を離さずにいる。
「灰英……もっと! 奥まで……っ」
「壊れるぞっ」
「大丈夫……。俺の体は二人を迎えられる」
いつも自信なさげに下を向いていた弥白とは思えないほど、その声には強い自信と意志が感じられた。
大切な人を傷つけたくはない。でも――。
灰英の葛藤とは裏腹に、弥白の細い腰は黒芭に支えられながらも淫らに揺れ続けている。
「弥白……」
「奥まで……来て。そして……満たして。俺の全部を……満たして」
懇願にも聞こえる弥白の吐息交じりの声に、灰英は再び腰をぐっと突き込んだ。
「あぁぁぁっ」
甲高い声が静寂を破る。大きく広げられた脚の先は敷布を掴むかのようにキュッと力強く丸められている。
半分ほど入ったところで、重なった黒芭のペニスから脈動を感じて、灰英は下肢に熱が一気に集まっていくのを感じた。
ドクン……。
血管を浮き立たせながら更に大きくなった灰英の突起が弥白のイイ場所を的確に攻めると、背を弓なりに反らせて体を痙攣させた。
わずかに膨らんだ下腹にぴったりとくっついたままのペニスからだらだらと白濁混じりの蜜が溢れ出しては、弥白の腹を濡らしていく。
射精を伴わない絶頂を一度でも味わうと、常にイキ続けていると同じ状態になる。
薄い胸を大きく喘がせて、それでも灰英の手を離さない弥白が愛おしくて堪らない。
「熱いな……」
最愛の二人の伴侶の楔を受け入れた弥白の蕾はまだ貪欲に収縮を繰り返している。
もっと奥へと誘うかのように蠢動する内部では、黒芭の熱棒がまた質量を増していった。
みっちりと咥えこんだ茎を、溢れ出す精液の力を借りてさらに奥へと捻じ込んでいく。
その度に弥白の体が震え、歓喜に咽びながら愛らしい声をあげる。
「ぐぅ……っ。も……少し……っ」
黒芭の下生えと灰英の下生えがか重なった時、長大な二本の楔をすべて体内に収めた弥白の唇がふわりと綻んだ。
「気持ち……いい。愛する男たちと一つになれた……」
金色が混じった紅の瞳を潤ませた弥白の体からぼんやりと白い光が放たれる。
その光は触れる者には優しいが、どこか邪な気も孕んでいた。
「動くぞ……」
狭い器官がその太さになじんだ頃、灰英がゆるりと腰を動かし始める。同じタイミングで、下から揺すりあげるように腰を突き上げる黒芭。
結合部からはグチュグチュと卑猥な水音が漏れ、抽挿するたびに最奥に放たれた精液が逆流し黒芭の下生えをしとどに濡らした。
「あ、あぁ……いいっ。もっと……激しく……突いて」
二人から与えられる底知れぬ快感に酔いながら、弥白は淫らな言葉を発する。
黒芭の手が彼の乳首を弄ぶと、体を重なるようにして灰英が濡れた唇を塞いだ。
弥白の体から放たれた光は徐々に大きくなり、黒芭と灰英をも包み込んでいく。
その光に当てられた二人は、それまでの情交が嘘だったかのように、体中に力が漲っていく。
動きが制限される黒芭の代わりに、灰英の腰の動きが早くなっていく。
互いの茎を擦り合わせるかのように激しく抽挿を繰り返し、弥白の最奥を的確に突き上げる。
「はぁ、はぁ……んく――っ!」
前立腺だけでなく奥のさらに奥の壁を硬い二本の楔で突かれ、弥白は思考が定まらなくなるほどの快感を覚えていた。絶え間なく腰から背筋を這い上がる甘い疼痛。全身の感覚をすべて『快楽』にすり替えていく。
断続的に襲う絶頂に白い肌に汗が滲む。その汗さえも愛おしいと、肌に舌を這わせる二人――。
「――イカ、せて」
掠れる様な小さな声が弥白の口から洩れる。たとえ、継続的にイキ続けていても決定的な何かを得たいと思うのだろう。
淫らで貪欲な白蛇――弥白が欲するのは二人の灼熱。
今までに注がれたモノの比ではない。もっと濃厚で香り立つ愛情……。
「欲しい……。二人の子種が……欲しいっ」
「弥白……」
『っく……灰英、我もそろそろ……限界が、近い……』
「俺だって、もう……とっくに限界超えてるけど……体が、弥白を欲して……堪らないん、だよっ」
何かに憑りつかれたかのように一心不乱に腰を振り続ける灰英。そして――。
「あぁ……ダメだ。イキそ……っ。イク……ッ」
『我も……出すぞっ。弥白……っ』
細い体で筋肉質の男二人のモノを咥えた弥白は、激しく突き上げる衝撃に頭の中が真っ白になった。
もう何も考えられない――それなのに。
「満たせ……。器から溢れるほど――注げ。崇高なる者たちよっ!」
弥白の凛とした声が再び結界を震わせた。
眩暈を覚えそうなほど香る麝香がぶわりと辺り一面に広がり、それと共に彼の体からキラキラと輝く粒子が放たれ、それが螺旋を描くように天井に舞い上がった。
背中に彫られた月白の蛇の目が大きく見開かれる。その眼光は鋭く、阻むものを咬み殺さん勢いだった。
「ぐっ……ぅ……イク……イク――っぐ、あぁぁぁぁ!」
『――っく。あ……あぁぁぁぁ!』
ドプリ……。弥白の中で目一杯まで膨らんだ二本の楔が熱量を湛えたまま大きく弾けた。
「あっ、あ……ダメ……イク、イク――いやぁぁぁぁぁぁぁ!」
最奥にある器官の入口に叩きつけられた奔流。その熱さに弥白が気を失いかけたその時、天井に舞い上がった粒子が蛇に姿を変え、座敷の上部で何度か旋回したあと物凄い速さで暗闇を裂くように外へと飛び出した。
後に残ったのは光の残像と甘く香る芍薬の花弁。
黒芭に抱きしめられたままぐったりと意識を失った弥白を労わるかのように、灰英はまだドクドクと脈打ち続けている自身の楔をゆっくりと引き抜いた。
「弥白……」
銀色の髪を頬に纏わりつかせ、目を閉じたままの弥白の頬をそっと撫でる。
黒芭も傷つけないようにと静かに繋がりを解くと、ぽっかりと口を開けたままの蕾からドロリとした白濁が溢れ出した。
弥白を抱いたまま体を起すと、艶やかに濡れた唇を親指でそっと拭ってやる。
『――美しい白蛇だ。こんなに美しい神を見たことがない』
「ああ……。愛しい……。これほど誰かを愛したことがあっただろうか」
薄闇に輝く月白の肌。滑らかな肌は今、激しい情交を物語るかのように薄らと桃色に色づき、しっとりと汗で濡れている。
黒芭はしっとりと濡れ、艶を帯びた長い髪を払いのけながら、腕の中で眠る弥白を見つめたまま灰英に言った。
その声はわずかに掠れてはいたが、自嘲しているようにも聞こえた。
『――灰英。弥白に感謝しておくんだな。お前はその手を汚さずに済んだ。この俺も……だが』
黒芭の言葉に、呼吸を整えながら片膝を立てて座っていた灰英が弾かれたように顔を上げた。
「え? どういうことだ?」
『この村を守るために避けて通ることの出来ない選択……。生まれ変わっても、邪神の妻だったな』
「黒芭?」
『穢れた血を排除し、蛇神守の純粋な血を引いた末裔であるお前を残した……と言えば分かるだろう』
妖艶に咲いた大きな花弁を二人に貫かれながら、華奢な体いっぱいに満たされた力を放った弥白。
その力が向かった先はひとつ――。
最愛の男の両親を奪い、血族というだけで権力を振りかざしてきた男たち。
その祖先もまた、私利私欲のために村を売ろうと企み、それを護った玄白の命を結果的に奪う事となった。
時代も悲劇も繰り返される……。それを一番恐れていたのは玄白自身だった。
その心を宿した弥白もまた、同じ衝動に突き動かされたのだろう。
「――まさか」
驚愕の表情で大きく目を見開いたまま身を乗り出した灰英に、黒芭は静かに続けた。
『これでもう、お前を苦しめる者はいなくなった。この村を滅ぼそうとする者もな……』
散々弄られ、赤く膨らんだ胸の突起を上下させながら、穏やかな寝息を繰り返す弥白を見つめ、黒芭は小さく笑った。
『ただ――。あの時と違うのは、最愛の伴侶が我らの腕の中で愛らしく眠っているということだ。この世に二つとない美しい体を残したまま……な』
「黒芭……」
『我らは護られた……。今度は生涯をかけて彼を――そして、村を護らねばなるまい』
それまで伏せられていたままだった金色の瞳がゆっくりと開けられ、すぐそばいる灰英を射抜いた。
薄い唇が何かを言いかけて、ふと動きを止める。
黒芭の瞳を見つめていた灰英はその続きを察し、わずかに首を傾けると自嘲気味に唇を綻ばせた。
弥白の傍らにつかれた片腕の筋肉が引き締まり、彼の腕に一際力が漲ったことを知る。
「もう、邪神とは言わせない……。愛と真実を司る神として、我らと共に生きる……」
透き通るような青い瞳に金色の光が宿る。
幼い頃から弱虫で、自分のあとばかりを追いかけてきた弥白。泣いてばかりの彼が時折見せる笑顔の眩しさに、どれだけ心を奪われてきただろう。
黒芭の腕の中で眠る幼馴染をじっと見つめ、節のある指先で涙の痕が残る白い頬に触れる。
「もう、嘘はつかない……。お前を守ってやる……から」
口先ばかりだった自分。手を伸ばしても彼を救うことが出来なかったもどかしさ。
彼への想いが膨らみすぎて、闇を宿した心。
それまで蓄積していた澱が、彼の体から放たれる力によって浄化されていく。
『純粋で一途な想い……。それを教えてくれた』
神としてこの世に生を受け、何千年という長い年月を生きてきても知ることのなかった感情。
黒芭の長い睫毛が小刻みに震え、端正な頬に一筋だけ涙が流れ落ちた。
「神様だって皆が皆、万能ってわけじゃないだろ……。誰にだって知らないことはあるし、弱い部分もある。ただ、人間の方がはるかに多くの弱さを抱えてる。それをどうフォロー出来るかってのは、鎮守である俺たちの力量にかかってるんじゃないのか……。心に根付いた闇をどれだけ取り除くことが出来るか……」
灰英は何かを決意するかのように黒芭に向き直ると、意思のある力強い声で続けた。
「奇祭と呼ばれた『蛇神祭』は終わらせる。俺たちに花嫁はもう必要ないからな。それでも――生贄になりたいと訪れる者たちには真正面から向き合ってやる。俺は神である前にこの神社の宮司だ。親父が心から願っていたこと――それって、こういうことだったんじゃないかと思うんだよ」
冷え切った空気の中、汗ばんだ肌が落ち着きを取り戻していく。それでも、乱れた灰色の髪から滴る汗の滴が先程までの熱い情交を思い出させる。
疲労の色を微塵も見せることのない二人の視線が自然とぶつかる。
黒芭は「クスッ」と小さく肩を揺らして笑った。
『――参拝者も、まさか目の前に蛇神の一柱がいるとは思うまい。御利益還元もほどほどにしておけ』
彼の言葉に灰英もまた「クスッ」と肩を震わせて笑った。
主従、信頼……それ以上の関係。
相反する二人を導き、結びつけた美しい伴侶にそっと口づけた。
布団の周囲に散らかった着物を手繰り寄せると、肌が冷えはじめた弥白の体にそっとかけてやる。
麝香の移り香がどこからか忍んでくる風に漂い、気怠げで、それでいて気持ちを穏やかなものへと変えていく。
婚姻の宴はゆったりと流れる時間の中で――。
そして、長い年月の間語り継がれてきた悲しくも美しい蛇神伝説が静かに幕を閉じた。
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