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第2夜
くしゃくしゃな天パー頭、160センチ48キロの華奢な身体、今年30歳になった亘は冴えない見た目と内気な性格のせいか、生まれてこのかた恋人どころか女友達さえいない。
おっとりと優しく、聞き上手なので教師として子どもたちにはおおむね好かれているが、同世代の異性を前にすると萎縮してしまい、デートしても上手くリードできない。
そんなところが女性には物足りなく感じるらしく、今まで何人か紹介されたがいずれも上手くいかなかった。
ハロウィンが終わると、町はすぐにクリスマスに染まり始める。
12月に入ると、教室でも受持の子どもたちがそわそわしだす。亘のクラスは2年生、サンタクロースやの存在をぼちぼち疑い始める年頃で、毎日のようにいるいないで揉めている。
教室の飾りや、お知らせプリントにあしらうイラストも、サンタやもみの木になった。
だが、恋人はおらず、友人も少ないひとり暮らしの亘にとって、個人的にはあまり関心のない行事で、毎年特に何もせずスルーして過ごしている。
そんな亘が12月24日に、キッチンのテーブルに置いたクリスマスケーキを前に途方にくれる羽目になったのは、5つ年下の後輩教師のせいだった。
非常勤講師の女性に声をかけられてクリスマスを思い出し、放課後残業の合間にクリスマスケーキの画像を検索してみた。クリスマスに興味はなくても、ケーキは嫌いではないので、華やかなケーキの画像を見るのは楽しかった。
チョコレートコーティングのみの大人っぽいガトーショコラ、色とりどりの砂糖衣のかかったシュークリームを積み上げたクロカンブッシュ、薪の形のブッシュドノエル、大きさも価格もさまざまなケーキの画像を眺めて、ひとりじゃ食べきれないなと思っていると、後ろからぬっと顔を出してきたのが、後半教師の遠藤貴志(エンドウタカシ)だった。
「佐伯先生、ケーキ、買うんですか?」
「わわ、びっくりした!」
亘が驚いて振り返ると、韓流スターのようにスッキリと整ったハンサムな顔がすぐそばにあった。
担任している5年生だけでなく、ほかの学年にもファンクラブがあり、保護者にも人気のイケメン教師は、ほとんどの人と明るく爽やかに接しているというのに、なぜか亘にだけは、少し意地悪だった。
小動物のようにいつもおどおどしているところが貴志をイラつかせるのか、と亘なりに分析し、距離を置いて見るのだが、貴志の方は亘が目に入ると構わずにはいられないようで、驚かせたり困らせたり、ちょこちょこいたずらを仕掛けてくる。
今も、スマホに見入っている亘の後ろからそっと近づき、わざと急に声をかけて驚かせたのだ。
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