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第5夜
ピザの配達員から受け取った箱を手に部屋に戻ると、亘は貴志に電話した。
パーティーが盛り上がっているのか、貴志は電話に出ず、ケーキの強引な注文の件も含めて、訳の分からない展開に亘は頭を抱えた。
ピザの箱からはおいしそうな匂いがし、2〜3人前の料理が詰められているらしいオードブルの容器にはサンタとソリを引くトナカイのイラストが施され、殺風景な亘の部屋にクリスマスの雰囲気をもたらした。
オードブルが肉料理に傾きすぎていたので、サラダを作ることにして、材料を買うために今度こそ出かけた。
外に出てみれば、町はクリスマスムードに包まれていて、街灯に巻かれた赤と緑のリボン、通りの家の軒先に吊るされたチカチカと点滅するライト、しつこく流れるジングルベルが一気に亘を包んだ。
こうなると、案の定、ひとりぼっちが身にしみてきた。
誰かと過ごそうにも、実家の両親もクリスマスを祝うタイプではなく、数少ない友人も恋人や家族と過ごしていると思うと、クリスマスに連絡を取るのはためらわれた。
「遠藤先生はどういうつもりなんだろ」
通りの石畳をとぼとぼと歩きながら、亘はひとりごちた。
子どもの頃から、アイドルのようなキラキラした人気者だったに違いない。
現に学校では、貴志の後を常に男女の児童がまとわりつき、保護者たちの受けもすこぶる良い。彼の参加する行事は出席率が非常に高かった。
高校、大学と中距離の選手として陸上部に所属していた貴志は、185センチの身体に程よく引き締まった筋肉をまとい、体育の時間、グラウンドに背筋を伸ばしてすらりと立つ姿は、スポーツウェアのモデルのようだった。
亘は華やかな場所が苦手で、そういう場所に集まる人間も苦手だった。だから、リア充を体現しているような貴志に対すると気後れして、つい敬遠してしまう。それなのに、貴志は無遠慮に近づいてきては孤独だが平穏な亘の心を振り回す。
困惑するし、不快に思うこともあるのだが、ケーキを勝手に注文した日、ぼっちかと聞かれてトンチンカンな返答をした亘に一瞬見せてくれた優しくきれいな笑顔を思い出すと、嫌いになりきれないのだった。
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