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第6夜
ケーキに合いそうだと思って買った、甘そうなスパークリングワインのボトルを冷蔵庫にしまい、一緒に買った人参とブロッコリーで、クリスマスカラーのサラダを、半ばやけになって作っているうちに日が沈み、とうとう、ケーキが届いた。
誰もいないテーブルに、ピザ、オードブル、サラダ、ケーキ、ワインのボトルを並べて見た。食卓の上だけは、幸せそうなクリスマスイブの夜だった。
虚しさが募り、テーブルの料理をそのままに、テレビの前のソファに座りこんだ。
録りためていた、クリスマスとは関係ない刑事ドラマをつけた。無骨な刑事たちが右往左往する画面を、ソファの上で膝を抱えて見ていた。
数々の、貴志の嫌がらせとしか思えない行為に、亘の心は折れそうになっていた。
テレビを観ながら、さっき街に出かけた時のことを思い出していた。
コンビニで簡単に出来合いのサラダでも買うつもりで家を出たのだが、街のクリスマスムードに誘われて、商店街に足を伸ばした。
アーケードを歩いているうちに、商店街の中心的存在の老舗デパートに着いた。デパートの地下での買い物を思いつき、正面の自動ドアをくぐると、3階部分まで吹き抜けになったエントランスの真ん中に大きなクリスマスツリーが飾られていた。
本物かフェイクかはよく分からないが、3階の床に届きそうな高さまで枝を伸ばした木に、金銀のモール、七色の球、天使やユニコーンなどの人形、ふわふわの綿、そしてチカチカと瞬く電飾が無数に飾られた豪奢なツリーで、周りでツリーを見上げている家族連れや、カップルなどと共に幸せなクリスマスの風景を亘にこれでもかと見せつけた。
こんな日にデパートにふらふらと入ってしまった自分の迂闊さを呪いながら、逃げるようにその場を後にし、結局商店街の端にあるコンビニで野菜とワインを買って帰ったのだ。
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