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第7夜
なぜ、貴志は自分に意地悪なのか。亘にはいくら考えても分からなかった。
ただ、貴志はいつも初めから亘をからかおうと思って話しかけるわけでもない。
例えば、一昨日の朝、連休初日ではあるが溜まっていた仕事を片付けようと出勤してみると、同じように休日出勤していた数人の教師の中に貴志の姿があった。
こちらにチラリと視線をよこし、軽く会釈をするとすぐに目の前のパソコンに顔を向けたので、亘も自分の机に向かい、仕事に取り掛かった。そのまま時間を忘れて作業に没頭していたが、自分の名前を呼ぶ声に顔を上げると、目の前に貴志がいた。
「そろそろ休憩しませんか」
そう言うと、手に持っていたコーヒーカップを差し出した。
学校では、教師はみな自分のカップを持ってきて、お茶やコーヒーを入れて飲む。貴志は自分の分を入れるついでに亘の分も入れてくれたようだ。
亘は恐縮しながら、貴志の手から青い釉薬のかかったシンプルなデザインの自分のコーヒーカップを受け取った。貴志は亘の隣で今日は出勤してきていない教師の机に浅く腰掛けると、自分のコーヒーカップに口をつけた。
貴志のカップには薄緑色の釉薬がかかっている。
前から思っていたのだが、あのカップは自分のカップと色違いのお揃いなんじゃ?と、コーヒーを飲む貴志を見ながら亘は考えていた。もっとも、そのカップは学校の近くにある大手スーパーでカゴに山盛りに積んであったセール品で、お揃いだったとしても単なる偶然だな、とも思いながらコーヒーをちびちび飲んでいると、貴志がカップを握ったままじっと亘を見ながら聞いてきた。
「結局、クリスマスはひとりですか?」
貴志のいつになくしんみりとした声に、亘は貴志を思わず見つめ返した。
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