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寒冷の森
冷たい風が木々を鳴らしながら近付いてきた。
風に触れた皮膚はあまりの冷たさに痛みを感じたらしい。
少しヒリヒリする・・・。
「吸血鬼でも自然相手には勝てないのか・・・。」
そんなことを考えながら、過ぎ去っていく風を見送るように振り向いた。
・・・振り向いて、足元で膝を抱えて丸くなっている少年に声をかけた。
「・・・フィン。寒いからって此処で丸まってても意味ないですよ?」
フィンは、年間を通して比較的温暖な村で育った子だ。この森に入ってからずっと寒がっていたが、さっきの風で遂に限界が来てしまったらしい。
「うぅ・・・ノアさんは平気そうな顔してる。やっぱ吸血鬼って強いんだね。」
「村で私を襲った時はフィンも魔族かもと思ってましたけど・・・こういうところを見るとやっぱりフィンは人族ですね。」
「魔族じゃなくて残念だった?」
「いいえ。魔族だったら退治しなくてはいけませんからね。可愛いフィンが人族で良かったです。」
立ち上がらせるために手を差し出すと、フィンはしっかりと私の手を握ってゆっくりとだが立ち上がってくれた。
彼の横顔がさっきよりも赤くなっているのは、寒さだけが原因ではないのだろう。
彼の可愛いところを見ることができて、自然と笑みがこぼれてしまった。
手を握ったまま元気付けるために声をかけた。
「たくさんの人族の声が聞こえます。町はもうすぐですよ。頑張りましょう?」
フィンが小さく頷いたのを確認してから、私は冷たく澄んだ空気に満たされている森を歩きだした。
勿論、手は繋いだままで。
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