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白の町
数十分歩いた先にレンガ造りの町があった。
町にはあちらこちらに植物が植えられており、この町は自然と共に生きてきたのだなと思った。
一つ気になったのは、建物や植物にキラキラした装飾品が付けられていることだ。
「綺麗な町・・・。」
「そうですね。町が飾られているのは、何かのお祭りとかでしょうか。」
町の入り口で立っていた俺とノアさんに気が付いた人が話しかけてきた。
「おや。旅人さんでしたか。ようこそ白の町へ。寒いなか大変でしたでしょう。」
「初めまして。私はノアと申します。修行中の聖職者です。」
俺は嘘をつくのが苦手だから、こういう時はノアさんが話す。
「やはり聖職者様でしたか。そちらの方は?」
「あ。初めまして。フィンです。」
「フィンと私はちょっとした理由で旅をしているのです。この町は綺麗ですね。何かのお祭りとかですか?」
ノアさんがそう訊ねると、その人は嬉しそうに話し出した。
「そうなんですよ。この町ではこの時期に白祭りといわれる行事があるんです。」
「白祭り・・・?」
「はい。あなた方も分かると思いますがこの町はとても寒いのです。
特に毎年この時期の寒さは厳しいものです。寒さ故に町の人々は性格が荒くなり昔は怒鳴り声が止まなかったそうです。
そんなある年、空から白い綿のようなものが舞ってきたのです。綿は触れるとすぐに消えてしまう不思議なものでしたが、口に入っても安全でしたし・・・何より白い綿が舞う町は寒さや、怒りを忘れてしまうほど美しかったのです。
それから毎年この時期に1日だけ白い綿が舞うようになったのです。いつ舞うかだけは特定できないのですが、舞った日の朝から晩までを白祭りとしてみんなでお祝いするのです。」
「なるほど・・・」
白祭りか・・・少し見てみたいけど、いつ舞うのか分からないのが辛いな。何日滞在するんだろう・・・。
そんなことを考えていると。ノアさんが声をかけてきた。
「フィンは、白祭り見たいですか?」
「え。俺はちょっと見てみたいなって思ったけど・・・ノアさんは?」
「私も見たいです。白祭り。しばらくこの町に滞在しましょう。」
「うん。ありがとう!」
嬉しさから少し高くなってしまっていた俺の声を聞いて、ノアさんはクスクスと笑ってから
「白祭りの話を聞いて滞在したくなりました。宿屋を教えてくれませんか?」と町の人に話した。
その人は「それなら、私の友人が経営している宿がありますよ。話を聞いてもらったお礼として、宿泊費を安くしてもらえるように私から頼んでみます。」と快く宿を紹介してくれた。
俺とノアさんは、白祭りの次の日までこの町に滞在することになった。
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