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#2-2

何となくこの三人でつるむことが多くなってから、身の周りが騒がしくなった。 しかもこの二人、なぜか必ず俺を真ん中に挟んで立ちたがる。お陰で常に左右から騒音がしている状態で、喧しいことこの上ない。 一方は本物のバカだが、もう一方は賢いくせに同じ次元で楽しんでいるタチの悪いバカだ。 巧妙に俺を茶番劇に巻き込もうとしてくるから、躱すだけでもいちいち面倒くさい。 「達規って電車通だっけ?」 「や、バス。駅遠いんよ」 「ふーん。いいよなあ、バスとか電車って。他校の子と出会えそうで」 「お前って常にそういうことしか考えてねえの?」 達規の言葉はたぶん正解だ。佐々井は基本的にそういうことしか考えていない。 高校生男子なんてみんなそうだろって? こいつと一緒にされるのは心外だ。 だから、教室に着くと同時に女子のグループに声をかけられ、いとも自然に会話の中に入っていった達規の後ろ姿を、歯噛みするような表情で佐々井が見送ったのは笑えた。 佐々井は別に女子と会話するのが苦手なわけではないが、特別得意でもない。男同士で駄弁っていることの方が遥かに多い。 それに比べ、達規は女子に混ざって盛り上がっていることも割と多かった。そんなときに達規を見る佐々井は、いつも羨望と嫉妬が入り混じった目をしている。 「達規ってさあ、何であんなに女子と仲良いんだろうな……」 「知らね。お前みたいに下心丸出しじゃねえからじゃん?」 適当に返せば案の定騒ぎ始めた佐々井を放って、俺はさっさと自分の席につき、鞄を開けた。 部活用のジャージやタオルが詰め込まれたエナメルバッグの奥から、教科書類を取り出し適当に机へ突っ込む。 ノート一冊だけは、仕舞わずに机の上に出しておく。 ぼんやりスマホをいじっていると、やがて達規が女子たちのもとを離れて席に座ったのが見えたので、俺はノートを掴んで立ち上がった。

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