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#4 close

終業式は期末試験のちょうど一週間後だった。 その間に全教科のテストが返却され、通知表と共に渡された成績表には、クラス順位と学年順位が書かれている。 ホームルームが終わると、廊下の掲示板に学年上位十名の名前が貼り出されていた。 「マジで今回も一位じゃん」 「全然勉強してなかったのにな……」 俺と佐々井は部活へ向かう途中、まだ人集りのある掲示板の前で足を止めた。 誰が、なんて言わずもがなだ。天才は破裂すればいいのに。いや、今いなくなられたらちょっと、というかそこそこ、結構それなりに、困るが。 「本気ですげーな、あいつ」 「俺、あいつに教えてもらってなかったら今回、数学赤点だった」 達規様様だわ、とうんうん頷く佐々井。つってもお前、数学三十二点だったろ。それほぼ赤点だろ。 俺はというと。 ぶっちゃけ英語の点数はそんなに変わっていない。赤点は回避したが、それも達規のヤマ張りが当たっただけのようなものだ。 学校の定期試験は、当たり前だが授業と連動しているから、俺が今達規に習っているような文法の基礎問題なんてまず出ない。「すぐに点数上がるとか思うなよ」と、達規も言っていた。 しかし、教科書に並ぶ英文が、最近明らかに以前とは違って見える。 単語の羅列、もっと言うならアルファベットの集合体としか認識できなかったものが、それぞれに役割をもって、納まるべき位置に納まっている。それがわかるようになった。 たぶん俺にとっての英語は、サッカーを知らない人間が、突然チームの監督をやろうとしているようなものだったのだ。 MFがミッドフィルダーの略だとか、ピッチの中央で攻守両方に関わるポジションだとか。 そういう基礎知識がすっ飛んでいるから、どう考えてもアタッカー向きの選手を、意味もわからず割り当てたりしてしまうのだ。 「お礼に今日なんか買ってやろうかな。プリキュアのお面とか」 「いいな。俺プリキュアのわたあめにするわ」 その学年首席様は、ホームルームが終わるなり「じゃ、またあとでねー」と手を振ってさっさと帰っていった。部活が終わったら連絡して現地集合の予定になっている。 天気予報は夜まで晴天。 七夕祭りの開始を告げる空砲花火が上がるまでは、もうあと数時間。

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