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#4-2

五時を少し過ぎて、全体での練習が終わった。 クールダウンのジョグとストレッチを済ませ部室に戻ると、一足先に戻っていた佐々井が、スマホ片手に打ち震えている。 何事かと思いはしたが興味はないので横を素通りしたら「水島ぁ! スルーすんなよ!」と汗臭いウエアのまま飛びつかれた。 「工藤ちゃんがさ」 「誰?」 「一組の!」 「……ああ」 前に体育のとき話しかけてきたっていう女子か。そういえばあの後、連絡先を交換したとか言って浮かれてたな。 時々やりとりをしているらしく、いちいち報告してくるが、興味がなさすぎて毎回失念してしまう。 「何回言ったら覚えてくれんだよ。まあいいや……工藤ちゃんも今日、友達と行くらしいんだけどさ」 「うん」 「もし会えたら一緒に周ろうね、って言われた!」 なるほど、部室に戻ってスマホを見たらそういうメッセージが来ていて感極まった、ということらしい。 理由はわかったがやっぱりどうでもよすぎて、俺はさっさと自分のロッカーに向かった。 「社交辞令だろ。マジにすんな、どうせ泣くんだから」 本気で一緒に周りたいなら誘ってくるもんじゃねえの? 知らねえけど。 ウエアを脱ぎ捨てて大判のボディシートで汗を拭きながら言うと、佐々井は大袈裟に肩を竦めた。 「はあ……相変わらず水島は女心が何もわかっちゃいねーな……イケメンの無駄遣いめ」 「どうでもいいからさっさと着替えろよ」 「へーい」 今日はチームメイトもほとんどが七夕祭りへ出向くようだ。 キャプテンの渡先輩は彼女と待ち合わせているらしく、ボディシートをいつもの倍くらい使って全身を拭きまくり「十分後には部室閉めるからな! 全員早く出ろよ!」と部員の尻を叩いていた。 どこの学校も終業式の日程は同じだろうから、今日は早くから多くの学生で賑わっているに違いない。 「あ、水島! 達規に連絡しといて!」 俺より早く部室に戻ってきたくせに、まだ着替え終わらない佐々井が言う。 俺は適当に頷いてから汗臭い部室を抜け出し、鞄の奥底に追いやられたスマホの発掘作業に入った。

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