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#4-7

安倍の後ろにいた三人のうちの一人が、佐々井を見てクスクス笑っていた。 口元を片手で押さえて、パンダの赤ちゃんでも見ているかのような、そういう種類の笑みに俺には見えた。 白地に淡い紫の朝顔が描かれた浴衣。ショートカットを編み込みにしていて、控えめで清楚な雰囲気だ。 これが工藤か、と俺はついまじまじ観察してしまう。ギャルの要素、どこにもねえじゃん。 「佐々井くん、何してるの?」 笑い混じりに工藤が言う。こんな人混みの中では簡単に掻き消されてしまいそうな、輪郭の細い声。 しかし佐々井にはしっかり届いたらしく「あっ、これね、いや本当だよね、俺何してるんだろうね!」とテンパっている。ぶん投げる勢いで外したお面の存在感がエグい。 女児向けアニメのお面を装着しているところを見られたのだ。 ドン引きされてもおかしくないところだが、なんと工藤は楽しげな笑みを浮かべたまま佐々井に歩み寄った。 また何か言ったようだが、俺の耳には届かない。佐々井の「あっ、えっ、そうなんだ!?」というリアクションだけが聞こえた。 片手にお面を持ったままの佐々井と工藤が会話を始めたので、達規が横目で二人を観察しながら、スーッと俺の隣へ移動してきた。 そのまま安倍や他の女子と二言三言会話をしていると、話の流れが何やら怪しい方向を向き始める。つまり、一緒に周ろうよ、みたいな方向に。 本音を言えば面倒臭い。安倍以外は名前も知らないし、気を遣いながら歩くのも正直ダルい。 しかし、女子から誘われて断るのもどうなんだ、という気持ちと、ここで嫌だと言ったら佐々井に呪われるんじゃないかという圧。 「どうする?」と達規に訊いたら「俺はどっちでもいいよ」と言いながら佐々井をちらっと見たので、たぶん同じような気持ちなんだろう。 図らずも浴衣女子四人と同行することになり、肩に掛かったエナメルバッグが急に少し重くなった。

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