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#4-8

最初は女子三人が前を歩き、その後ろに俺と達規。 一番後ろを佐々井と工藤が並んで歩いていて、俺たちは工藤が何か言うたびに大袈裟なリアクションを返す佐々井のテンパり具合を聞き続ける羽目になった。バラエティで上がりまくって空回る若手芸人みたいだ。 しかし工藤は「佐々井くん面白いね」と、ずっと笑っている。どこがだ。振り向いて突っ込みたいのをぐっと堪える。 それから、列が入れ替わって、いつの間にか俺の前を達規が歩いていた。 女子の一人と並んでいて、言葉を交わしながら、時折声をあげて笑っている。 俺の横には安倍と、その隣にもう一人の女子。 俺は安倍たちと当たり障りのない会話をしながら、何となく目ではずっと達規の後頭部を眺めていた。 浴衣姿の女子は可愛いけれどそれだけで、俺はやっぱり友達とくだらない応酬をしながら歩く方が楽しい。 だから、達規がこっちを振り向いていつものようにくだらない話をして笑ってくれればいいのにと、何となくそんなことを思いながら見ていた。 そうして三十分ほどは歩いただろうか。 女子たちが林檎飴を買うのを後ろから眺めていて、ふと佐々井たちの姿がないことに気づく。 「あれ、玲奈と佐々井くんは?」 戻ってきた安倍たちもそこで気づいたようで、きょろきょろと辺りを見回す素振りをするが、すぐに顔を見合わせてにんまりと笑った。 二人でわざと逸れたんだろうということは容易に想像できたが、マジか、という思いが先に立つ。 部室で佐々井が浮かれていた姿も思い出されて、「マジか」ともう一度、今度は声にして呟かずにいられなかった。 五人になった俺たちは再び歩き出した……と、思ったが。 「え……、おいっ」 女子三人が歩き出したのを追おうとしたところで、左腕を掴まれ止められた。 何か言う間もなく、達規に腕を引かれるまま、元来た道を早足で数メートル引き返す。 慌てて振り向くが、安倍たちの後ろ姿はあっという間に人混みに飲まれて見失った。 「おい、達規、どうしたんだよっ」 声をあげると、達規は速度を緩めて振り向いた。 「あいつらも無事逸れたんだし、もう俺ら無理して付き合わなくてよくね? 女子めんどいっ」 イ、の形に唇を左右に引くから、尖った八重歯が見えた。 キツネの目が悪戯っぽく煌めいている。 達規が立ち止まって俺の腕を離すまで、さらに数メートル、俺たちは逃げるように歩いた。

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