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#4-9
鉢合わせになったら面倒だからという理由で、俺と達規はもう一本別の道を行くことにした。
今がピークの時間帯だろうと思えるほど、人通りはさらに増えている。
「女子と歩きたかった?」
三人だったときと同じ、俺の左側を歩く達規が、そんなことを聞いてきた。
即答で首を横に振る。
「正直キツかった。喋ることねえし」
「ははっ。水島、あーとかおーとかばっかり言ってたもんな。まあ、佐々井よりは全然マシだったけど」
工藤とマンツーマンになった佐々井の動転ぶりを思い出したのだろう。達規がくつくつ喉を鳴らして笑う。
そういえばあいつ、あのお面持ったままなんじゃないか。あれでヘマしなきゃいいが。
「てか、工藤かぁ……佐々井、食われたな」
「は?」
「あいつ、大人しそうにしてっけど、他校に五人くらいセフレいるらしいよ。めっちゃ肉食だって」
「は。嘘だろ」
「マジ。これはね、確かな筋からの情報です」
「確かな筋って何だよ」
「俺の友達も工藤に童貞食われました。今は五人のうちの一人です」
マジか。さっきからこればっかり言ってる気がする。
工藤のことは、浴衣に描かれていた朝顔しか俺にはもう思い出せないが、ただ見るからに清楚系で控えめな雰囲気だったのは間違いない。
いつも言っている佐々井の好みと全然違ったから、女子なら何でもいいのかと、内心で唾を吐いていたのだ。
肉食とかセフレとか、そんな感じにとても見えなかった。
「だからさあ、清純ぶってる奴ほどいろいろ隠してるんだって。水島も気ぃつけろよ?」
「……女子って怖え」
「それな」
やっぱり俺は女子と付き合うとか、そういうの、まだいい。面倒臭いし怖い。
そのうち自然と誰かを好きになって、付き合いたいとか、キスやその先をしたいとか、思うようになるんだろうか。
想像しようとして、……脳裏にあれが浮かんだから、即やめた。
達規とこういう話題はダメだ。
どこに地雷があるかわからないから不安だ。
会話の方向転換をするべく、俺は立ち並ぶ出店の列に慌てて目を走らせた。
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