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#4-10
達規と学校以外の場所で会うのは初めてだったし、まともに二人だけというのも、ほとんど経験がない気がする。
大抵は佐々井がいるし、学校というのは周りを見知ったクラスメイトに囲まれているから、二人だけで喋っていても、二人、という体感はないように思えた。
今、俺の目と手の届く範囲には、俺の知っている人間は達規だけだ。
肩がぶつかる距離で大勢の人間とすれ違う中だが、それは何だかとても、二人きり、という感じがした。
「あ、ちょお待って。俺あれ食う」
「うわ……きつ……」
達規の立ち止まった先にあったのはクレープの屋台だった。
魚の腹みたいにたっぷり巻かれた皮の中に、溢れそうなほどホイップクリームが詰め込まれている。飾り程度に乗せられたバナナのスライスに、滴るほどかかったチョコレートのソース。
達規が店のおっさんに何か話しかけたと思ったら、おっさんは笑顔で達規のクレープにチョコスプレーを足した。ざかざかかけた。致死量くらいかけた。カラフルなチョコの粒でクリームは完全に見えなくなった。俺は胸焼けで死にそうになったので、隣の屋台でイカ焼きを買った。
あらかた見尽くしたと思ったが、花火が上がるまでもう少し時間があるし、まだ全然食える。
達規と歩くのは新鮮だった。
佐々井がいないときの達規は、ちょっと静かというか、落ち着いている。
突然寸劇や無茶振り合戦が始まることもないし、穏やかな会話が普通に成り立つ。
駅前まで移動して、特設ステージで知らない芸人コンビの漫才と地元のジャズピアニストの演奏をぼんやり眺めた。
めぼしい企画もそれで大体終わったようで、ステージ周りの人口密度が一気に薄くなるのに混ざって、俺たちも特に行き先も決めずぶらぶら歩いた。
「屋台って何時までやってんだろ。てか花火っていつ?」
「九時前とかじゃなかったか? たぶん屋台もそのくらいだろ」
スマホを取り出すと、ちょうど八時半を過ぎようとしていた。
心なしか通行人の年齢層が上がってきた気がする。学生はそろそろ引き上げる頃合いで、もうすぐ街は酔っ払いの時間になるのだろうなと思った。
「やべえ、かき氷食うの忘れてた!」
「マストか? それ」
「いやマストっしょ。よし、かき氷探すぞ」
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