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#5-4
その翌日も、翌々日も、達規の頬に痣はなかった。
自分でやったのか、誰かにやってもらったのかは知らないが、見事に消されていた。化粧の力って凄い。俺は女子の肌の綺麗さとかもあまり信じないようにしようと思った。
夏休み明けの日常のリズムはすぐに戻ってくる。
あっという間に週末になり、いつものように部活に明け暮れて、月曜日。
その話題は朝一番、佐々井のアホな口から出た。
「達規さん。あなたに逮捕令状が出ています」
「は?」
眉間を抑える某刑事ドラマの主人公のポーズに、神妙な口振り。
ろくでもない内容であろうことはその時点でだいたいわかったが、まあ一応聞くか、のスタンスで俺と達規は顔を見合わせた。
「あなた、女性と会っていますね?」
「え?」
「しかも女子大生。年上好きだったんですね?」
「いや……会ってないです。人違いじゃないですか」
答える達規は真顔で首を傾げている。その返答に、佐々井は伏せていた目を突然ガッと見開いた。
「とぼけんな。ネタは上がってんだよ。お前、K大に何の用だ? こら」
「うわっ、ガラ悪くなった」
急に高圧的に詰め寄られ、抑えきれなくなったらしい達規が吹き出す。
佐々井が挙げたのは市内の大学の名前だ。
「K大がどうした」と俺がつい口を挟むと、ここぞとばかりに令状とやらの内容をまくし立て始めた。
週末の土曜日、K大のキャンパス付近に達規がいたとの目撃情報がある。
一人だったが明らかに誰かを待っている様子だった。
大学は土日でも学生の出入りがある。恐らくK大の女性との待ち合わせだったに違いない、とのこと。
「どうやって女子大生と知り合った、吐きやがれ!」
鼻息を荒くする佐々井に対し、当の達規はけらけらと声をあげてさも愉快そうに笑っている。
「冤罪です。誤認逮捕です」
「嘘をつけ!」
「ほんとだって。近くで知り合いと待ち合わせしてただけだから」
「その知り合いってのは何だ! 何の知り合いだ!」
「何のっつーか、普通に男だしね」
なにぃ……と、佐々井は歯軋りでもしそうな勢いで思いっきり顔を歪ませている。
「女子大生じゃねーのか? 本当に?」
「ほんとほんと」
「年上の綺麗なお姉さんと会ってたんじゃねーのか」
「むしろそうならよかったわ」
「年上好きか?」
「年下よりは」
「女子大生っていいよな」
「でもK大よりA大のが美人多いって聞かん?」
「いつの間にか何の話だよ、お前ら」
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