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#5-7
俺は視線を落として、それをまじまじと眺める。
生まれて初めて当たった、と喜んでいた達規にとって、これは記念品みたいなものなのだろう。大袈裟な言い方だが、達規の喜び方だって十分大袈裟だった。
そう思ったら、見慣れたラベルが何だか急に特別なもののように思えた。
「え、アクエリ嫌い?」
ちょっとトーンの下がった声に、なぜか俺は少し慌てて首を横に振った。
「いや……めっちゃ飲む」
「めっちゃ飲むんか。それならよかった。ちなみに俺はポカリ派です」
ああ、甘いもんな、あっちの方が。俺はありがとう、と短く言って、達規の顔の高さまで視線を上げた。
前にも思ったが、制服姿の達規は、外だといつもよりヤンキー感が増して見える。
紐の長い手提げ鞄を背負う形で使っているのとか、腰穿きのスラックスのだぼついた感じとか、全体的にだらっとしたシルエットが強調されるせいかもしれない。
髪だってさらに明るく見えるし、ピアスも目立つ。吊り目だから場合によっては目つきも悪く見えるかもしれない。喧嘩したら弱そうだけど。
「何じーっと見てんの。好きになった?」
まだ当たりのテンションを引きずっているのかもしれない。フェンスの向こうの達規はそう言ってけらけら笑った。
その顔の左側に、もう痣はない。見えない。
ふとそう思うのと同時に、胸の内側にモヤッとしたものが広がった。
それは何日か前にも感じたーーいや、正しく言うなら、この何日かの間、ずっと心に薄く影を作っていたものだった。
気がつくと俺は達規の顔に向かって右手を伸ばしていた。
俺より約十センチ、低い位置にある達規の顔は、不健康なほどではないにしろ、日に焼けていないぶん白い。
触れる間際で、ぎょっとしたように達規が目を見開いた。
気持ちはわかる。いきなりクラスメイトに顔なんか触られたらビビる。というより俺自身、同じ気持ちだ。何しようとしてんだ俺。
でも今さら止まらなくて、構ってもいられなかった。
達規の左頬を包むように手が触れる。
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