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#6 wall

始業式の日に行われた模試の結果が返ってきた。 数学はちょっと良くて、物理はちょっと悪かったが、もはやそんなことはどうでもいい。 英語の点数に俺は唖然とした。 二百点満点中、七十点。 今まで見たことのない数字がそこにあった。 「……えっと、それは、良かったってことかなあ?」 「ああ? 当たり前だろ!」 本気の戸惑い顔で抜かす達規の鼻先に、勢いよく成績表を突きつける。 「二十点とか取ったことあんだぞ。ナメんな。何点上がったと思ってんだよ」 「威張るとこじゃねーし」 「七十点って、百点満点に換算したら三十五だぞ。赤点回避だぞ。奇跡だろうが」 学年首席様はそんな点数取ったことないだろうが、俺にしてみれば大変なことだ。学校のテストも大概だが、模試ではさらに点数が取れなかったのだ。 「いや、でも、模試でプラス五十点って普通に凄くね? 達規先生の力はんぱねえな」 横で佐々井が珍しくまともに感心しているが、達規はやはりピンと来ない顔だ。俺の成績表を勝手に眺めて唸っている。 「基礎からやり直してんだから、そんくらい伸びて当たり前っしょ。最初の村からレベル上げし直してるようなもんだし」 「え、お前ゲームやんの。意外」 「ドラクエ三日で飽きたけどね」 真顔というか、あまり感情のないような顔で、達規は俺の成績表をひっくり返して裏までガン見していた。 裏には各科目ごとの得点分布や正答率がグラフになって並んでいる。 自分でもほとんど真面目に目を通していなかった部分を見られて、ちょっと落ち着かない気分になった。 「まだ中学の範囲の途中なのに、五十点も伸びたってことはさ、基本さえやっとけば半分は取れるってこと」 達規は言いながら、人差し指でグラフをなぞる。 「水島は入り口んとこで躓いてたってだけで、頭悪くねーし。全然、まだまだいけるよ」 最後に成績表の端を、指先でぴしっと弾いた。顔を上げ、にっと八重歯を見せて笑って、 「安心しろって。こんな点数で奇跡とか言えねーようにしてやっから」 と言って、俺に成績表を差し出してきた。 達規の掲げた目標は、模試で六割。 なんか、マジでいけるのかもしれない、と思って、俺は内心震えた。 「達規先生かっこいい! 抱いて! 水島を!」 「ふふん。六割取れたら考えてやろう」 「いらねえよ」

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