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#6-5

再び、だらりだらりと廊下を移動。昼休みの校内は賑やかだ。女子の甲高い笑い声がどこからか聞こえてくる。 「そういえば、水島の姉ちゃん、二個上っつったらあの人とタメだよな」 購買に向かう生徒たちとすれ違う中、斜め前を歩く佐々井が振り返った。「あー、名前何だっけ、あの人」と痒いような顔をしながら隣の達規を仰ぐ。 「なあ達規、あのイケメンの人、何つったっけ」 「え、誰の話」 「達規と仲良かったじゃん、あれだよ、王子! 二十人斬りの!」 「あー……保科(ほしな)さんね」 知らない名前が出てきた。そもそも二個上の学年なんて、サッカー部の先輩の他は一人も知らない。 「誰それ」と聞くと、佐々井は「知らねえの?」と息巻いた。 「超イケメンで、歴代彼女も可愛い子ばっかでさ、高校三年間で二十人斬りらしいぜ! マジなんかな?」 どうなの、と話を振られた達規は「知らんし」とさほど興味なさげに返事をする。 「ていうか俺、別に仲良くねえし」 「でも朝一緒に来たりしてなかったっけ?」 「家近いんよ。だから小学校んときから知ってんの。たまたまバス一緒になったとか、そんだけ」 そこで教室に着いた。女子は一足早く弁当を広げている。 鞄から弁当を取り出し、代わりに体操着を突っ込む。達規と佐々井もそれぞれ昼を持って俺の席に集まってきた。 「やべえよなあ、二十人斬り……俺の最推しだった飯田センパイも、あの人と付き合ってたんだよなあ……」 「まだその話すんの? 佐々井は二十人斬りが目標だって工藤に言ってやる」 「やめてください」 やけに達規の乗りが悪い。バレーでの集中攻撃を根に持っているのかもしれない。そのままメロンパンの封を開けて食べ始めた。 「水島も早く食い終わって、それ」 「は? 食うけど、何で」 俺の弁当を指差しながら達規が言った。急かされる理由がわからず聞き返す。昼を食い終わったら達規による英語講習会が始まることはわかっているが。 「今日から現在完了形だからです」 「現在完了形」 「習った覚えある?」 「薄っすらと……」 「楽しいよ、現在完了。だから早く食って」 なるほど、自分の好きなところだから早くやりたいらしい。勉強オタクの偽物ヤンキーはいつものカフェオレではなく、いちごオレを啜っていた。

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