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#7 fall

ひとつ前の席に座った達規が、後ろを向いて俺の机に頬杖をついている。 珍しくもない構図だったが、あることが決定的に違った。 「……嬉しそうだな」 「めっちゃ嬉しいですけど何か?」 木曜日の六限はロングホームルームだ。今日の題目はふたつ。 三ヶ月ぶりの席替えがそのひとつめで、つい先程、籤引きによって決まった新しい席への移動が完了したところだった。 「前向いて座れよ」 「ヤダ。水島と喋りたい」 「喋らねえ」 「喋ってんじゃん」 「うるせえ」 俺の席は廊下側の列、一番後ろ。当てられにくいし、出入りも楽で最高の席だ。籤の引きが良かったのは日頃の行いの成果だろう。 そして、達規が今座っているのが、紛れもなく達規本人の席だった。 昼休みになると必ず俺の前の席にやって来る達規のせいで、今までその席の主だった山内には大変迷惑をかけていたわけだが、この度正式にそこは達規の席となった。 それはいいのだが。 「なあ、福助の新しい写真ないの?」 「あるけど今見せらんねえだろ」 「なんで」 「なんでって、授業中だろうが、一応」 さっきからずっとこれだ。 何度言ってもこっちを向いたままで、俺の顔を覗き込みながら延々話しかけてくる。 「ホームルームは授業じゃない」 「黙って前向いとけ」 「ヤダ。学祭なんかどうでもいいもん俺」 唇を尖らせる姿に、いよいよ呆れて溜め息しか出なかった。 現在話し合われている、ホームルームのもうひとつの題目が、約二ヶ月後に待つ学園祭の出展決めだ。 黒板にはすでに出された十個以上の案が並んでいた。この中から第三候補までを実行委員に提出し、時間や場所の兼ね合いを調整されて最終決定となるシステム。 「めんどくせえのになったら困るだろうが」 準備が面倒なものは嫌だというのが俺の本音だ。部活の時間が減る。それに、当日の仕事が多くて忙しくなるのも極力避けたい。 しかし達規は本当に何でもいいらしく、「それならそれで別に」などと呟いている。 茶髪頭を鷲掴んで力任せに前を向かせようとしてみるが、頑なに従おうとしない。ここまで来ると半分は意地だろう。 そんなことをしているうちに、前に立った学級委員長の早見から「達規と水島、イチャイチャしてないで真面目に参加しろ」と白い目を向けられた。十割達規のせいだ。

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