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#7-6
「大学の友達にさー、亨の写真見せたら、めっちゃタイプって言っててぇ」
右手でスマホを操作しながら、左手を肩に回してくる。そして背中に福助のタックルを食らった。痛い。
顔より高い位置にスマホを掲げられ、見上げるとほぼ同時にふざけたシャッター音。
姉貴と密着した状態で写真を撮られたのがわかった。
「写真送るねーって約束したの。あんた顔だけはイイからぁ」
「勝手に変な約束すんな」
どうせ顔が詐欺レベルに加工される自撮り用のアプリだろう。姉にいきなり写真を撮られるのは、実際のところ慣れていた。
そして自分勝手な姉は、自分から寄って来ておいて「ていうか汗臭っ!」と俺の肩を力任せに一発叩いた。
「もぉー、とりあえず用済んだから行ってよし!」
「ほんっとウゼエわ……」
「早めに帰って来なさいよぉ」
語尾を伸ばすバカっぽい喋り方。姉貴の声と福助の一吠えを背に、俺はさっさと外へ脱出した。
いつものコースを三十分、からの延長戦。帰ると面倒な奴がいると思うと、つい足が帰路から遠のいてしまう。
普段の五割増しで四十五分ほど走り通してから、俺はようやく家に帰った。
さすがに腹も鳴りだしたのを堪えて風呂場へ。
さっさと汗を流して部屋着に着替え、居間に戻ると、姉貴が母と並んでテレビを観ながらバカ笑いしていた。
一足早く食卓に並べられていたおかずを前に、米と味噌汁だけ自分でよそって座る。
弟の姿がないのは、姉貴にひとしきり絡まれて部屋に逃げたのだろうと予測がついた。
「あー、この人、ドラマ出てた。めっちゃかっこいいよねぇ」
「お母さんはこっちの人の方が好きかなー」
「えー、この人めっちゃ女癖悪いらしいよぉ」
「あらっ、そうなの? ショックー」
どうしたって視界に入り込んでくる姉貴の茶髪の色が、達規とそっくりなことに気づいて、ちょっと落ち着かない気分になりつつ肉じゃがをつつく。
「でもちょっとワルいくらいの方がモテたりするわよねー」
「それ古いよお母さん。今はね、男も紳士な方がいいんだってぇ」
「知ってるわよ、あれでしょ? 草食系男子」
「それも微妙に古いし」
二人の会話をBGMに、サラダと鰤の照り焼きを黙々と平らげていく。米もおかわりした。あっという間に空になった皿を台所へ下げる。
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