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#8-2

夏休みが終わって一ヶ月半、飛ぶように過ぎ去った気がするが、当然ながらその間にも授業はどんどん進む。 いつの間にやら中間試験が来週に迫っていた。今日からまたテスト週間だ。そして再来週は学園祭。その頃には校門前のイチョウも金色になって落ち始めていることだろう。 昼休み、いつものメロンパンを片手に達規が言った。 「今日も美術室使えるけど、どうする? 達規先生の特別講習いる?」 「お願いします」 俺と佐々井が声を揃えて答えると、達規はにやっと笑った。 そうして今回も俺たちは、美術室を私用化してテスト週間の放課後を過ごしている。 「今回マジでやべえ、数学やべえ死ぬ」 開いた教科書で顔を覆いながら佐々井がぼやくと、達規は「佐々井が数学やべーのはいつもじゃん」とあっさり返した。 「今回は特にやべえんだよ。達規先生、マジで助けて」 「そこまでやばくなる前に何とかすりゃいいのに」 当たり前の顔で正論を打つ達規だが、佐々井は教科書を机に半ば投げ出してさらに主張する。 「あのな、それができる奴はそもそも頭いいの。バカは手遅れになってからじゃねえと自分のヤバさに気づけねえの。水島の英語見りゃわかんだろ?」 「てめえと一緒にすんな」 佐々井と同列のバカとして挙げられたことに不名誉を感じたので、とりあえず一言挟んでおく。 達規は「威張んな」と白い目を佐々井に向けてから、いじっていたスマホを机の上に伏せて置いた。 「授業で理解できなかったとこは、その日のうちに聞け。達規先生は天才だけど、一週間じゃどうにもできないことあっから。わかった?」 「ハイ……」 「で、何がやべーって?」 「あ、優しい……」 このへんです、と言いながら佐々井が数学の教科書を指差し、達規が覗き込む。そのやりとりを聞きながら俺は英語のワークに手をつけた。 達規による毎日昼休みのマンツーマン講習は飽きもせず続いていて、お陰様で俺は、高校入試で得点ゼロだった長文がある程度読めるくらいにまではなっていた。 しかしまだ授業の範囲までは到底追いついていないし、ややこしい文章はお手上げ状態だ。テストは別物として対策する必要がある。 俺は自習、佐々井は達規に教わる形でしばらく勉強を進めていると、佐々井のスマホが鳴った。 「あ」 「誰?」 「……工藤ちゃん」

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