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#8-5

突きつけられたのは現実だった。 「え」と声を漏らしたっきり、咄嗟にとぼける言葉を見つけられないくらいには、鮮明な事実だった。 繋がってしまう、と思った。 記憶の中の光景と、目の前にいる友人の姿が、オーバーラップして。 達規は僅かに眉を下げて、ふ、と小さく笑った。全部お見通しだとでもいうような、それでいてどこか惑うような目をしていた。 「水島ってさ、嘘つけないよねえ」 達規のさっきの言葉に、決定的なものはひとつもない。あんときっていつだよとか、見たって何をだよとか、どうとでも返せたはずで。 何も言えなかったことこそが肯定の返事に他ならないと、今更気づいたところで遅かった。 無意識のうちに詰まっていた息を吐き出して、声を絞り出す。 「気づいてたのかよ、俺だって」 最初からわかっていて友達付き合いを始めたのだとしたら、とんだ悪趣味だ。しかし達規はこともなげに「いーや?」と首を横に振った。 「顔は見えんかったし。もしかしてそうなんかなーって思ったから、カマかけてみたんだけど。水島わかりやすすぎ」 「……なんで」 じゃあ、なんで俺かもって思ったんだ。いつからだ。聞きたいことはいろいろ出てくるがうまく言葉にはならない。それでもおおよそは伝わったらしい。 「んー、まあ、背格好とかそれっぽかったし。あと初めてここ連れて来たとき、ちょっと固まってたっしょ。なんかいろいろ辻褄合うなあって、思って」 ――よく見てんな。バレてたのか。 俺が知らないふりを貫くつもりでいたのに、人の気も知らないでこのキツネ野郎は、自分から秘密を曝してきやがった。 それならせめていつも通りの顔をしていてほしいのに、達規は自虐的に笑っている。 歪めた口角を片方だけ吊り上げて、笑うのが下手な奴みたいな顔をしている。 そして呟いた。 「あれ見たくせに、何で俺と仲良くしてくれんの」 キモくねーの? と続く声は、震えていた、という程ではないが。 平静を装い損ねて上擦ったように俺には聞こえたから、返答に悩むより先に口が動いていた。 「別に」 これが秘密を曝してきた理由か、と思った。 俺はこのままずっと知らないふりを続けるつもりだったけれど、達規にとってはそれは、しんどいことだったのかもしれない。この疑念を抱えたまま俺と接していくことは。 そのことに初めて思い当たって、罪悪感に似たものさえ浮かんで、俺は。 何と言ったら達規を安心させてやれるのかを、咄嗟に考えていた。

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