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#9 pick
テストから解放されると、クラスの雰囲気は来週末の学祭へ向けて一気に高まった。
有志で形成された中心グループ、通称・実行委員のメンバーは、休み時間も放課後も問わず準備に明け暮れている。
ロングホームルームの時間も準備に当てられ、生徒がいくつかのグループになって作業を進めていた。
「俺ら当日って何やりゃいいの?」
黒いビニールに鋏を入れていきながら、佐々井が言う。
俺は「知らねえ」と返しながら、佐々井が切ったビニールの上に一回り小さい段ボールを重ねる。
「お化けの格好するメンバーはもう決まってっから、お前らはそれ以外の裏方。時間交替で、あいてる時間は校内歩いて客引きだって」
「お前らは、って、達規は何すんだよ? お化けやんの?」
段ボールから余ったビニールを折り返して押さえたところに、達規がテープを貼っていく。
窓に貼り付ける遮光板の出来上がり。たぶんあと五十枚くらい必要。
「俺はねー、受付やれって言われた。これも時間で交替だって」
美術部部長という、本来ならば忙しそうな立場であるはずの達規は、放課後はいつも暇を極めているようで、実行委員に混じって準備に参加していたりする。
学祭なんてどうでもいいと言うからろくに参加しないのかと思ったが、出展が何になるかがどうでもいいだけであって、何になってもそこそこに楽しむ、というのが達規のスタンスらしかった。
「受付ってなんか特別なことやんの?」
「さあ。ルール説明してライト渡すだけって言ってたけど」
教室内の一角でわっと歓声が上がったので見ると、天井まで届く高さの鳥居が建っていた。
かなり気合いの入った出来だ。入り口に設置されるらしい。
真っ赤に塗られた左右の支柱に、達規が量産したお札がびっしりと貼られている。
その他にも仕掛けや小道具が教室のあちこちに並んでいた。
人が隠れられるサイズの墓石や井戸から、血糊まみれのマネキンの生首まで。
「結構クオリティ高いよな」
「暗かったら怖ぇな、絶対」
「あ、見て。この生首、俺の作品」
「キモっ」
「お前、お札と言い、その才能何なの?」
「こんなとこでも天才だったわー」
学祭の準備なんてだるいことしかないと思っていたが、こうして形になってくると結構、楽しい。そんなもんだろう。
まだ返ってきていないテストの点数のことも忘れて、クラスまとめてお祭りムード。悪くない。
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