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#9-7

十時を過ぎ、校外からの一般客の姿があちこちに見えるようになった。 もちろん生徒も各クラスの出展やステージ発表を自由に見て歩くから、校内は一気に賑わい、まさに祭りの様相だった。 学校中に貼りまくったポスターの効果か、二年二組のお化け屋敷には開始早々から結構な人数が押し寄せた。 俺たちはてんてこ舞い状態になりながらも順番待ちの列を整え、閉め切った教室の中からは、すぐに悲鳴が相次いで聞こえるようになった。 ふと受付の達規を見ると、さっきまでぶつくさ言っていたが、開き直ったのだろう。人懐こい顔で笑いながら、さすがに要領のよい手つきで客を捌いている。 「このお札を一番奥の祠に置いてきてクダサイ。中では走るの禁止。外に出るまで絶対に振り向いてはいけません。オッケー?」 他校の制服を着たギャルっぽい二人組が、お札と懐中電灯を受け取りながら「オッケー!」とはしゃいでいる。 お化け屋敷の受付がそんなヘラヘラしてていいのか、と思わないでもなかったが、あの格好だし、愛想を振りまくくらいでいいのかもしれない。 出口から飛び出してくる客のリアクションを見ていると、なかなかの怖さを出せているようだ。 その評判と、立て続けに漏れ聞こえてくる悲鳴がさらに客を呼び、列が長くなる。出足好調だ。 「そろそろ抜けても大丈夫じゃね?」 「だな」 俺も佐々井も今はフリーの時間だ。最初は手伝いが必要かと思い待機していて正解だったが、もう大丈夫だろう。 他のクラスでも冷やかしに行こうと、俺たちは連れ立って歩き出した。 「お、お前らチョコバナナ買ってけよ!」 「普通のだろうな? チンコ型はいらねえぞ」 「あれは女子にキレられたから、安田さん用の一本しか作ってねー」 サッカー部の連中がいるクラスを中心に覗いていくと、繁盛しているクラス、いまいちなクラスとそれぞれではあったが、どこを見ても学校内外の客がいた。 生徒は自分のクラスの宣伝用に看板を持っていたり、揃いのTシャツ姿も見かける。かく言う俺たちも首からポスターをぶら下げており、Tシャツこそないがフェイスペイントでそこそこ人目を引いていた。 「女装メイドきっつぅ……」 「ああ? ふざけんな。よく見ろよ、この美脚を」 「まさか毛、剃ったのか……?」 フリフリのミニスカートから伸びる、サッカー部員のつるつるの健脚。 相当きついものがあるが、二年五組の女装メイドカフェはかなりの客入りを見せていたから、ウケてはいるのだろう。 数日前も思ったが、うちのクラスがこれじゃなくてよかったと、俺は心の底から思った。血糊なんて痛くも痒くもない。

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