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#13 call

週末の明けた月曜日の朝、俺はまたしてもひどく憂鬱な気持ちで登校した。 学校では嫌でも達規と顔を合わせることになる。前後に並んだ席順が恨めしくてたまらない。 身構えて教室に入ると、達規はまだ来ていなかった。肩に入っていた力を一旦抜いたところで、軽快な足取りの佐々井が寄ってきた。 「水島オハヨウ! なあなあ昨日始まったドラマ観た?」 今日も朝からテンションが高い。 こいつはなぜいつもドラマの話を俺に振ってくるんだ、あんまり観ねえの知ってんだろうが。テレビの話でお前と盛り上がれたこと一度もねえだろ。 「主演の子が超可愛いんだよ、マジ観ろ、来週は観ろ」 「お前のそれは確実に俺の好みじゃねえから観ない」 「いやいや、今回は水島もいけるって! 黒髪ロングだし!」 「別に黒髪ロングなら好きなわけじゃねえんだけど」 いつもの調子で佐々井と適当に話していたら、戸口から達規が現れた。 ブレザーの中に着込んだキツネ色のカーディガン、ピアスでがちゃがちゃの耳、外見は何から何までいつも通り。ただ俺と顔を合わせた瞬間の無反応だけが違っていた。 「お、達規オハヨ!」 何も知らない佐々井は暢気に手を上げる。達規はすぐに普段の顔になって「おはよ、佐々井」と返すと、すぐ横の俺にはそれきり目もくれずさっさと自分の席についた。俺たちに背を向ける格好。 佐々井が「あれ?」って顔でその様子を見ている。 名指しで佐々井にだけ挨拶した達規と、それを受けて僅かに眉間に皺を寄せた俺。 何かを察したらしい佐々井は俺にアイコンタクトを寄越すが、応える気にならずそっぽを向いた。 「お前ら、喧嘩でもしたのか? 何で?」 何ともストレートにそう口にすると、双方から返事の得られなかった佐々井は達規の席の前に回ると「なあ、どしたのタツキチ」と顔を覗き込む。 「水島に聞いて」 俺の位置から達規の顔は見えないが、頬杖をついて壁側に顔を背け、ぴしゃりと言ったのはしっかり聞こえた。佐々井が泣きそうな顔をして戻ってくる。 「水島ぁ……お前何したんだよ。達規があんな怒ってんの見たことねえぞ。ガチヤンキーの顔してたぞ今」 それは確かに、ポメラニアンだと思っていた子犬がドーベルマンだった的な衝撃だろうな、と佐々井を少し憐れに思う。 何したかって? 言えるわけあるか。ちくしょう。 どうやら達規はだいぶ怒っているらしいが、俺も怒らせるかもしれないとわかっていてやったことだ。謝る気もない。 佐々井には悪いが、しばらく和解はできそうにない。 もしかしたらずっとこのままかも、とも思った。 柄にもなく胸がずきっとした。 達規の後ろ姿を視界の端にこっそり捉え、どうにもしがたい気持ちで肩を竦める。 恋愛って一体何が楽しいんだ。しんどいことばっかりじゃねえか。

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