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第3話

 スズメが鳴き交わし、就寝タイムだ。レオンはにっこり笑うと、クロゼットに入って内側から鍵をかけた。  せめて寝顔を拝みたいという、順平のささやかな願いは今朝も叶わないのであった、しくしく。  さて、ヴァンパイアといえども収入を得ないと暮らしていけない。順平の職業は夜勤専門の警備員で重宝がられている。レオンのほうはバーテンダーで、悪い虫がつかないかと、やきもきしちゃうのはさておいて。  ある夜、ヴァンパイア仲間が休憩時間に訪ねてきて、開口一番こう言った。 「九十九田一(つくもだはじめ)がこの界隈をしらみつぶしに捜してる。気をつけな」    それはヴァンパイア・ハンターと遭遇する恐れがある、という知らせだ。  九十九田の父親も腕利きのハンターだったが、日本在住のヴァンパイアが団結して再起不能に陥らせた。なので、九十九田は弔い合戦とばかりに狩りに励むに違いない。  順平は制服の袖をめくり、力こぶを作った。 「忠告、ありがとう。レオンさんは俺が全力で護るからご心配なく」 「相変わらずメロメロなんだ。不憫だねえ」    にやにやされて、でれでれすると、おえっと吐く真似が返った。  ところでレオンは風呂好きだ。たまたま……あくまでたまたま用があって脱衣所に行くと、折しも麗しいシルエットが、中折れドアの磨りガラスに映し出された。  当然、釘付けになった。風にそよぐしだれ柳のように裸身が揺らめき、脚の付け根を洗う動きを見せると、(よこしま)な考えが頭をもたげる。  順平は、わざとドタドタと脱衣所から出ていくと、忍び足で取って返した。床を這い進み、磨りガラスに目を凝らす。  泡にまみれたペニスに手が添えられ、スポンジが円を描くように輪郭をなぞるさまに唾が湧く。  ああ、あのスポンジにあやかりたい。いわゆる裏筋を念入りに、ねっとりと洗ってあげたい……。  いきなりドアが内側に開かれた。頭が挟まる形になってジタバタしているところに、猫なで声で話しかけられた。 「順平くぅん。匍匐前進の練習かなあ?」

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